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どんな企業でも、作業を効率化するためにITツールが必須となっている時代です。
煩わしい作業、ややこしい作業、面倒で時間のかかる作業も、ITツールを導入することで非常にかんたんにスピーディーに片付くようになることもあります。
しかし、ITツールは種類によってはかなり高額になることもあり、中小企業者や小規模事業者にとって、ITツール導入の経費はなかなかの痛手になることもあるでしょう。
そのような事業者にぜひ知ってもらいたいのが「IT導入補助金」という制度です。
2017年度より新しく実施されたこの制度は、中小企業者や小規模事業者にとって、心強い味方となる制度となっています。
そこでここでは、以下のような疑問や要望に答えていきます。
- IT導入補助金はいくらもらえるの?対象者は?
- 申請方法をわかりやすく知りたい!
- 募集期間とかあるの?
- IT導入補助金で注意することは?
では、IT導入補助金とはどのような制度なのか、そこからまずは見ていくことにしましょう。
※2019年度の公募はすでに終了しています。
この記事では、「2019年度の情報」と「2020年度の見込み」について紹介していきます。
IT導入補助金とは?
IT導入補助金とは、中小企業や小規模事業者などが、自社の業務に必要なITツールを導入するときの費用の一部を補助し、業務の効率化や売上アップのサポートを図る制度のことです。
要するに、「ITツールの導入に必要な経費の一部を国が支援するので、上手に活用して利益を増やしたり、効率化して労働時間の削減などを実現してください」ということです。
このIT導入補助金は、経済産業省より出されており、2017年度は100億円の予算でしたが、2018年度は500億円と、たった1年で5倍もの規模に膨れ上がりました。
ただし、予算は5倍あるものの、1件あたりの補助金額は下がってしまいました。
予算の大幅増加と補助金額の減額は、より多くの中小企業や事業者に気軽に使ってもらうことを狙った結果のようです。
2019年度のIT導入補助金の補助金額
2019年のIT導入補助金の補助金額は、またA類型とB類型の2つで分かれており、それぞれ以下のように上限と下限が設定されています。
- A類型:40万円~150万円未満
- B類型:150万円~450万円以下
また全体では、下限40万円から上限450万円までとなり、補助率は2分の1以下と定められているのです。
これでは少しわかりづらいので、以下の具体例を見てみましょう。
■ 100万円のソフトウェアを導入する場合
→ 50万円まで補助金が出ます。
■ 920万円のソフトウェアを導入する場合
→ 460万円ではなく上限の450万円までとなり、補助金2分の1以下となります。
ちなみに、2017年度は補助金額が下限20万円から上限100万円までで、補助率は3分の2以下でした。
2018年の補助金額では、15~50万円だったので、今年は上限が9倍に拡大した形となります。
補助金額が高く予算が少なかった分、限られた企業しか利用することができませんでした。
IT導入補助金の対象者とは?
補助金って本当に限られた人しか対象になっていないイメージがありますが、IT導入補助金の対象者はとても広範囲に及びます。
では、どのような人がIT導入補助金の対象者となるのかご紹介します。
対象の企業
まず、対象となる企業は「中小企業」と「小規模事業者」の2種類です。
IT企業だけでなく卸売業から製造業、サービス業までと、じつにさまざまな企業が対象となっています。
対象となる企業は全国で13万社にもおよぶため、自身の企業もIT導入補助金の対象企業である可能性は十分にあるので、ぜひ確認しておきましょう。
具体的には、以下の表に当てはまる企業が対象です。
※対象条件:資本金もしくは従業員規模の一方が、下記を満たすこと | ||
指紋金 (資本の額または出資の総額) |
従業員 (常勤) |
|
製造業 建設業 運輸業 |
3億円 | 300人 |
卸売業 | 1億円 | 100人 |
サービス業 ※ソフトウエア業、情報処理サービス業、旅館業を除く |
5,000万円 | 100人 |
小売業 | 5,000万円 | 50人 |
ゴム製品製造業 ※タイヤおよびチューブ製造業、向上用ベルト製造業を除く |
3億円 | 900人 |
ソフトウエア業または情報処理サービス業 | 3億円 | 300人 |
旅館業 | 5,000万円 | 200人 |
その他 | 3億円 | 300人 |
医療法人、社会福祉法人 | – | 100人 |
特定非営利活動法人 (NPO法人) |
主たる業種に記載されている、資本金もしくは従業員規模以下のもの |
また、以下の組合関連もIT導入補助金の対象企業となっています。
- 企業組合
- 協業組合
- 商工組合、商工組合連合会
- 事業協同組合、事業協同小組合、協同組合連合会
- 商店街振興組合、商店街振興組合連合会
- 生活衛生同業組合、生活衛生同業小組合及び生活衛生同業組合連合会
- 水産加工業協同組合および水産加工業協同組合連合会
- 酒造組合、酒造組合連合会及び酒造組合中央会
- 技術研究組合
- 内航海運組合及び内航海運組合連合会
なお組合関連に関しては、一部条件のある組合もあるため、事前に確認しておくことをおすすめします。
対象の業務範囲
ではどのような業務対象となるのかご紹介します。
対象となる業務は、売上や在庫の管理から会計まで幅広い業務が対象の範囲となっています。
企業の業務を「フロント・ミドル業務」と「バックオフィス業務」のふたつにわけ、対象となる業務からふたつ以上の機能を持ったITツールの導入に、補助金が交付される形となっています。
役割 | 機能 | ||
フロント・ミドル業務 | フロント | 顧客と対面して注文を受け、売上をあげる機能 | 売上・売掛・請求・回収管理、発注・買掛・仕入・支払管理、在庫管理など
※18種類の業種別機能から選択する |
ミドル | 原価や在庫、納期などを管理してフロント業務を支える機能 | ||
バックオフィス業務 | フロント・ミドル業務を支えて、売上、コスト、利益を管理する機能 | 原価計算、予算統制、税務申告、財務会計、管理会計、人事給与など |
業務を効率化するITツールの導入が補助されるため、非効率な業務および課題を改善することが可能となります。
対象の製品
対象となる商品は、ソフトウェア製品やクラウドサービス、そしてそれに付随するオプション、サポート費用など、ITツール導入に必要な経費のほぼすべてが、対象となっています。
ソフトウェアから導入にかかる費用、保守サービスなどすべてまとめて使えるので、必要な費用をまるごと対象にすることができます。
内容 | |
ソフトウェア製品
クラウドサービス |
生産性の向上が見込まれる、一定の導入効果が得られるソフトウェア製品およびクラウドサービス、ホームページ制作など
※補助対象はSaaSのみ |
オプション | 機能拡張やデータ連携ソフト、ホームページの利用料(サービス料やサーナバー料など)。クラウドサービス年間利用料追加など
※ソフトウェア製品およびクラウドサービス本体とセットでの導入が必要 |
役割 | 保守、サポート費(最大1年まで)、導入設定料金、業務コンサル料、導入研修、マニュアル作成、セキュリティ対策など
※ソフトウェア製品およびクラウドサービス本体とセットでの導入が必要 |
なお、以下の製品は対象となりませんのでご注意ください。
- ハードウェア(POSレジ、デジタルサイネージなど)
- PaaS、IaaSのクラウドサービス
- ソフトウェア内部を大幅に変更が可能なカスタマーレビューやスクラッチ開発
- 表計算や簡易データベース作成などの、汎用性の高いソフトウェア
IT導入補助金の対象となる条件
IT導入補助金の対象となる条件についてまとめてご紹介します。
- 中小企業者(個人事業主)である
- ITツール導入によって生産性の向上が実現する事業計画がある
- 複数の機能が備わったITツールの導入を行う
- IT導入支援事業者が代理申請を行う
- 補助事業開始から5年間、生産性向上に関する情報を報告する
IT導入支援事業者とは、該当する事業に登録されているITベンダー・サービス事業者のことです。
IT導入補助金申請の窓口となってくれるので、申請者がITツールに関して詳しくない場合でも、製品に関する情報や運用方法などの説明を行ってもらえるので、ITツールに関する知識はほとんどなくても大丈夫です。
さらに、ITツールの導入から実績報告手続きの相談やサポートなども受けられるため、活用方法がわからなくなったり、さらなる効率化を図りたい場合など、しっかりサポートしてもらえます。
IT導入補助金の申請方法
IT導入補助金の申請は、IT導入支援事業事務局ポータルサイトから行うことができます。
なお、中小企業および小規模事業者と、ITベンター・サービス事業者では申請手続きの内容が違うため、事前によく確認しておきましょう。
IT導入補助金の交付決定の連絡が届く前に、発注や契約、支払いなどが行われた場合は、補助金を受け取ることができないので注意してください。
ITベンター・サービス事業者の手続きの流れ
まずは申請するまでの流れをご紹介します。
- IT導入補助金事業者登録申請、ITツールの登録申請→IT導入支援事業者およびITツールの採択
- ITツールの提案
- IT導入補助金交付申請
申請後、IT導入補助金の交付決定から補助金の交付までは以下の通りです。
- 契約・ITツールの導入
- 事業実績報告→補助金額の決定
- サポートおよびアフターフォロー→補助金交付
なお作成された申請・報告情報は、中小企業および小規模事業者の確認と承認手続きを得て、IT導入補助金事務局への提出が完了します。
中小企業および小規模事業者の手続きの流れ
中小企業および小規模事業者の申請までの流れは以下の通りです。
- 本事業の理解→IT導入支援事業者およびITツールの採択
- ITツールの選択などの事前申請
- 交付申請
つぎに交付決定後から補助金交付までの流れをご紹介します。
- 補助事業の実施
- 事業実績報告→補助金額の決定
- 補助金交付手続き→補助金交付
- 事業実施効果報告
事業実施効果報告とは、事業終了後から5年間、生産性向上に関する情報をポータルサイトより入力することで完了します。
生産性向上に関する情報とは、交付申請時に計画地として提出した、売上・原価・従業員数・ひとりあたりの年間平均勤務時間です。
また、任意でITツール導入による取り組みおよび効果についても報告できます。
IT導入補助金の募集期間
IT導入補助金はいつでも申請できるというわけではなく、限られた機関で募集をしています。
2017年度は1次募集と2次募集のみでしたが、2018年度は3次募集まで募集回数を増やしています。
なお、募集期間中であっても予算上限に達したら途中で募集が終了してしまうこともあるそうなので、募集期間がわかり次第早めに応募することをおすすめします。
さて、2019年度の募集期間や実績報告期間などはどのようになっているのでしょうか?
まずは以下をみて、今年度のスケジュール感を押さえておきましょう。
「A類型」のIT導入補助金一次公募
2019年度で新しく導入された「A類型」では、以下のような公募期間となっていました。
- 交付申請期間:2019年5月27日~6月12日
- 交付決定日:2019年6月26日
- 事業の実施期間:2019年6月26日以降~2019年12月24日
- 実績報告予定:2019年8月13日~2019年12月24日
続いて「B類型」についても紹介しておきます。
「B類型」のIT導入補助金一次公募
一方で「B類型」は、以下のようになっており、「A型類」とはズレがあるようです。
- 交付申請期間:2019年5月27日~6月28日
- 交付決定日:2019年7月16日
- 事業の実施期間:2019年7月16日以降~2019年12月24日
- 実績報告予定:2019年8月13日~2019年12月24日
このように、「A類型」と比べ、交付決定日が少々うしろにズレる形となっていました。
IT導入補助金の二次募集
続いて二次公募について、2019年度情報も紹介しておきます。
- 交付申請期間:2019年7月17日~8月23日
- 交付決定日:2019年9月6日
- 事業の実施期間予定:2019年9月6日以降~2019年1月31日
- 実績報告予定:2019年9月6日以降~2019年1月31日
このようになっています。
また、一次も二次も申請期間と報告期間の期限は「17時まで」となっていますので、この点にも注意しておくべきでしょう。
この制度は、おそらく2020年度も実施される可能性があり、交付申請期間および交付決定日などのスケジュールも大幅に変更される可能性があります。
次回以降の応募を検討している場合は、事前によく情報を確認するようにしましょう。
2020年度のIT導入補助金制度は行われる?いつから?
ここまでで、2019年度のIT導入補助金制度についてみてきましたが、2019年度の公募についてはすでに終了しています。
そうなると、IT導入補助金制度をこれから公募したいと考える方は、2020年度の公募情報が気になることでしょう。
ここでは、2020年度はいつごろから公募が開始されるのか、また過去の公募と比べて審査難易度はどうなっているのかについて紹介しておきます。
では早速、順に確認していきましょう。
2020年度の公募開始はいつになる?
そもそもIT導入補助金制度が2020年度も実施されるのかという点が、まず気になりますが、この点についての不安はいらないようです。
経済産業省の令和2年度の概算要求資料(PDF)によると、以下のような記載が明記されていました。
「ものづくり・商業・サービス補助金」「自治体型持続化補助金」「IT導入補助金」による中小企業の生産性向上。
※参考:経済産業省(令和2年度の概算要求のポイント:PDF資料)
ただし、その公募開始時期については、現在のところまだわかりません。
とはいえ、準備に時間がかかることもしばしばですので、時期がわからなくとも早い段階から着々と準備しておき、公募開始に備えておくことをおすすめします。
「2017~2019年度」のIT導入補助金の制度比較
2020年度の審査がどの程度のものになるのかをお伝えする前に、過去のIT導入補助金がどう変化してきたのかを見ていきましょう。
どう変化してきたのかを確認することで、次回はどうなるのか、ある程度予測を立てることもできます。
まずは下表を確認していきましょう。
2017年度 | 2018年度 | 2019年度 | |
申請対象者 | 中小企業 or 事業者 | ||
予算総額 | 100億円 | 500億円 | 100億円 |
補助の割合 | 2 / 3 | 1 / 2 | 1 / 2 |
補助金額 | 20~100万円 | 15~50万円 | 40~450万円 |
交付予定件数 | 1万4,300件程度 | 6万3,000件程度 | 6,000件程度 |
申請受付開始時期 | ・一次:1月27日
・二次:3月31日 |
・一次:4月20日
・二次:6月20日 ・三次:9月12日 |
・A類型:5月27日
・B類型:5月27日 ・二次:7月17日 |
実施期間 | 約3ヶ月間 | 約3ヶ月間 | 約5ヶ月間 |
上表を見てお分かりのとおり、2019年度は補助金額こそ増額されましたが、その採択件数については大きく減少した形となっています。
また公募開始期間については、まちまちで2020年度はどうなるのか、予測できないのが現状でしょう。
表にまとめた様子だと、2020年度は、さらに狭き門となる可能性があるのではないでしょうか?
2020年度はより審査が厳しくなる?
さて2020年度のIT導入補助金制度ですが、ハッキリといってまだ読めないのが現状です。
ただし2019年度は、1社あたりの補助額が上がり、全体採択件数は少ないものの手厚い補助金となりました。
2020年度は、この傾向が継続するのか、それとも2018年度のように幅広く補助するのか、どの形で行くのかはわかりません。
ですが、知名度が上がってきたことを踏まえると、幅広い形をとったとしても、2018年度ほど間口が広くなるとはいえないでしょう。
どちらにせよ、この制度については常々アンテナを張っておき、情報をキャッチしていく姿勢が大切となります。
IT導入補助金を利用するときの注意点
IT導入補助金を利用する際に注意すべき点をご紹介します。
注意点①:IT導入支援事業者を選ぶとき
IT導入支援事業者は、あらかじめ登録されている事業者から選びます。
インターネットで、身近なエリアのIT導入支援事業者を検索することで、IT導入補助金のサポートを行ってもらえるIT導入支援事業者を探すことが可能です。
なお、IT導入支援事業者から話を聞く場合は、複数の企業を提案してもらうことをおすすめします。
企業によって得意不得意があり、考え方もそれぞれで違います。
そのため同じ課題に対しても、企業によってさまざまな観点から解決策を提示してもえることもあるでしょう。
また、同じような機能を持つITツールでも、企業によって細かな機能や使いやすさに違いがあったりもします。
IT導入支援事業者は、代理申請から5年間の事業実施効果報告まで、長期的に関わっていくことになるため、
- サポートの丁寧さ
- 返信の速さ
- 担当者と自社の相性
なども、判断ポイントとしては重要になっていきます。
なので、提案された解決策だけではなく、相性面もしっかりチェックをしておくことが良策となるでしょう。
注意点②:IT導入補助金交付決定前にITツールを導入しないこと
IT導入補助金の対象となるのは、IT導入補助金交付が決定したあとに、
- 契約
- 発注
- 支払い
を行ったITツールのみです。
申請後であっても、交付が決定する前に導入してしまった場合、過去に導入したツール同様に、IT導入補助金の対象外となってしまいます。
それでは、IT導入補助金をもらうことはできません。
ですので、ITツールの導入は必ず「交付が決定したあと」に行うようにしましょう。
IT導入補助金のよくある質問(FAQ)
ここではIT導入補助金に関するよくある質問を抜粋しておきます。
より具体的に確認したい方は、「IT導入補助金のポータルサイト」を参考にしてみましょう。
他の補助金や助成金と併用はできるの?
国が提供している他の補助金や助成金では、補助対象となっている事業内容が重複しなければ申請できます。
それ以外の場合は、併用できません。
また補助金や助成金の違いがいまいちわからない方は、以下の記事でわかりやすく解説していますので、参考にしてましょう。
補助金と助成金の違いってなに?きちんと理解して活用しよう!交付を申請する時はどんな書類が必要?
法人と個人事業主とで必要な添付書類は異なります。以下の表を参考にしましょう。
法人 | 個人事業主 | |
必要添付書類 |
※法人インフォに登録があり、内容に相違がなければ場合は不要 |
※マイナンバーの記載は見えないように塗りつぶすこと |
開業したばかり(今年)でも交付申請はできるの?
申請できます。
複数の業種を扱っている場合はどれを記入すればいい?
直近の決算書を確認し、売上が一番多いものを主な業種ととらえるようにしましょう。
リースは補助の対象になるの?
IT導入補助金では、対象とはなりません。
生産性を高めたいならIT導入補助金を検討すべき!
IT導入補助金は非常に多くの企業が対象となっています。
対象はITに関連する企業だけではなく、ITツールを使用する企業のほとんどが対象であることから、対象外だと思われるような企業であっても対象となっている可能性は十分にあります。
より企業の生産性を高め、利益を出したいと思っているのであれば、IT導入補助金の申請を完投すべきでしょう。
まずは申請の第一歩として、対象者であるかどうか、そして対象となる製品は自社の生産性を高めることが可能かどうかを確認することをおすすめします。
※2019年度の公募はすでに終了しています。