法人の種類と特徴を理解しよう!それぞれの比較と注意点も紹介

法人の種類と特徴を理解しよう!それぞれの比較と注意点も紹介

法人の種類は数が多く、これから事業を始める方や法人化を検討している方の中には、「自身の行う事業では、一体どの法人格が合っているのか」と悩む方も少なくありません。

また、事業に合っていない法人格を選択してしまえば、後に無駄なコストが発生する事態にもなり兼ねないでしょう。

ここではそういった事態を避けるためにも、

  • 各法人格のそれぞれの特徴や違い
  • 各法人格の比較一覧
  • 法人格選びで事前に把握しておくべきこと
  • 失敗しないための注意点

ついても紹介していきます。

では早速みていきましょう。

「法人の種類と特徴を理解しよう!それぞれの比較と注意点も紹介」のイラスト

法人を設立する前に

数ある法人の種類を説明するにあたって、事前に知っておくべきことがあります。

ここではその内容について、先に紹介していきますので、各項目は理解しておくようにしましょう。

公法人と私法人とは

単に法人といっても、その種類は大きく2つにわかれます。

まず「公法人」についてですが、これは行政の目的のために国や地域活動を主に行う法人となります。

公法人に属するものとしては、公共団体や公共組合、独立行政法人などがあるでしょう。

一方「私法人」は、行政の権力を必要としない民間法人のことをいいます。

また私法人は2種類にわかれ、利益を目的とした「営利法人」と、利益の追及はしない「非営利法人」があるでしょう。

一般的に起業するとなれば、この私法人の中から、法人の種類を選ぶこととなります。

有限責任と無限責任とは

法人の種類を決定する際には、「有限責任」と「無限責任」についても知っておく必要があります。

まず有限責任とは、会社が何らかの原因で返済不能となった場合、その負債総額について出資金額以上の責任を負う必要がないことを表します。

これはつまり、出資者の個人的な財産は守られるということを指します。

一方「無限責任」については、その名の通り無限ですから、会社が抱えた負債総額のすべてを、自身の財産を使用してでも弁済する責任を負うこととなります。

また出資者が複数人いる場合では、連帯して弁済することになるでしょう。

有限会社の設立はできない

「有限会社」と付く企業は見かけることもありますが、現在ではその設立はできません。

これは新会社法が施行された際に、有限会社法が廃止されたためです。

ただし、既存の有限会社まで廃止というわけにはいきません。そこでそういった企業については、「特例有限会社」として、法的には区別されるようになっているのです。

営利法人の種類とは

営利法人の種類とは

ではここから、いよいよ法人の種類について紹介していきます。

まずは、起業する方が選ぶ法人格の中で人気が高い、営利法人の種類から紹介していきます。

またそれぞれの法人格には決定的な違いもありますので、営利法人を選択する方は、ここである程度は候補を絞ってしまいましょう。

株式会社|営利法人の種類

まず法人格の中でも最も人気が高いのが、この「株式会社」となります。

この法人格は、会社を所有する人物と経営をする人物を、全くの別物として扱うのが特徴です。

そのため、出資しているからと、必ずしも経営に携わる必要がありません。

また株式会社はその名の通り、株式を公に発行できます。

その際に出資した人は株主となり、出資金額内で責任を負う、有限責任者となります。

そんなリスクの低さから、出資金が集まりやすい傾向にあるのが特徴でしょう。

将来的に大きめの資金調達を行いたい場合では、この株式会社を選択するのが得策といえます。

株式会社の注意点

ただし、そんな株式会社でも注意すべき点はあります。

それは出資額によって議決権の強さが変わることです。

 

株式は公に発行し、一般から出資を集めることもありますが、代表取締役の決定権をより強いものにしたいのであれば、代表取締役よりも額は低くする必要があることを覚えておくようにしましょう。

持分会社|営利法人の種類

まず持分会社とは、ここで紹介する「合同会社」と「合名会社」、「合資会社」の3つの法人格の総称です。

持分会社は株式会社とは異なり、設立費用が安く済みます。

また会社を所有する人物と経営をする人物は、分離はせずに一括りとして扱うのも特徴のひとつでしょう。

これはつまり、出資した人のみで経営を行うことを意味しています。

またそれゆえ、出資金は集めにくいことは確かですが、信用のない部外者が経営に干渉してくることがない点を考えれば、経営体制が荒れるようなリスクは低くなるでしょう。

議決権については、出資額にかかわらず平等となります。

そのため気の知れた間柄で起業する際などは、この持分会社が向いているといえるでしょう。

持分会社の注意点

ただし、株式会社のように株式の概念がないため、

  • 株式上場できないという点
  • 株式会社ほどに認知度はないため信用面で劣るという点

は理解しておく必要があります。

合同会社

合同会社の一番の特徴は、株式会社と同様で社員(出資者)全員が有限責任であるという点です。

それゆえ、起業時には仲間を集めやすい利点があるでしょう。

また設立に必要な人数は、1人から可能です。

合名会社と合資会社の説明も後にしますが、持分会社から選ぶのなら、社員全員が有限責任である合同会社を選択しましょう。

合名会社

合名会社では、負債総額の弁済が発生した際に、社員全員がすべての責任を負う無限責任者となります。

それゆえ、経営に参加してくれる方(社員)を探すのはむずかしくなるでしょう。

これは個人事業主と非常に似た性質となるため、この法人格を選択する方は、ほとんどいないのが現状です。

合資会社

合資会社は、合同会社と合名会社の間のような性質で、有限責任である社員と無限責任である社員によって構成されます。

そのためこの法人格の設立では、最低2人は必要となるでしょう。

ただし、合同会社ほどのメリットもないため、こちらも法人格として選択する方は少ないといえます。

非営利法人の種類とは

非営利法人の種類とは

非営利法人とは先に少しお伝えしましたが、利益追求はせずに事業目的のために活動する法人のことです。

そのため、利益については営利法人とは異なり、分配はできません。とはいっても、収入がないのではそこに所属する職員は生活が成り立ちません。

事業目的の達成のためであれば、職員への給与の支払いも可能です。

非営利法人の説明は以上として、本題の非営利法人の種類について紹介していきます。

では早速、それぞれの法人格の特徴についてみていきましょう。

一般・公益社団法人|非営利法人の種類

まず社団法人とは、人の集まりによって法人格を得られる非営利法人で、社員2人以上から設立が可能です。

たとえば、医療系の学会や資格認定機関などがこれにあたります。

また一般社団法人の場合、基本的に事業の内容については自由に設定でき、公益のために事業を行う義務もありません。

ただし公益社団法人では、税制面で優遇措置を受けることが可能ですが、事業内容に公益性がなければ、認定を受けることはむずかしいでしょう。

注意

また公益財団法人となるためには、一般社団法人をまず設立しなくてはなりません。

その後、公益社団法人として登記をすることとなります。

一般・公益財団法人|非営利法人の種類

財団法人とは、設立者に300万円以上の財産があれば、だれでも設立することが可能です。

この場合の考え方は、財産自体が法人格になるようなもので、設立後2期連続で300万円より資金が下回れば、解散しなくてはなりません。

一般財団法人の場合、社団法人と同様で事業内容に制限はなく、自由に設定することが可能です。

注意

公益財団法人の設立についても、社団法人と考え方は変わらず、まずは一般財団法人の設立が条件となります。

NPO法人|非営利法人の種類

NPO法人を理解するために、まず「NPO」とは何かという点から説明していきます。

NPOとは、社会で起きている問題(教育関係や福祉関係など)に対し、解決や支援をするために社会貢献活動を行う団体のことをいいます。

つまりNPO法人とは、このNPO団体を法人化したものといえるでしょう。

しかし、NPO法人として行える活動分野には制限があります。

その活動分野は、以下に挙げる20種類に限定されますので、NPO法人の設立を考えている方は、事前に確認しておくようにしましょう。

NPOの活動分野一覧
1.      保健、医療又は福祉の増進目的

2.      教育の推進目的

3.      観光の振興目的

4.      まちづくりの活性化目的

5.      農山漁村・中山間地域の振興目的

6.      学術・文化・芸術、スポーツの振興目的

7.      環境保全目的

8.      災害救援活動目的

9.      地域安全目的

10.   人権擁護や平和推進目的

11.   国際協力の活動目的

12.   男女共同参画社会の促進目的

13.   子どもの健全な育成目的

14.   情報化社会の発展目的

15.   科学技術の振興目的

16.   経済活動の活性化目的

17.   職業能力開発や雇用機会の拡大支援目的

18.   消費者の保護目的

19.   NPO団体への助言や援助目的

20.   1~19の項目で都道府県や指定された都市の条例で定める活動目的

※参考:内閣府NPO

また設立する際は、役員3人以上かつ監事が1人以上必要で、最低社員数については、役員を含め10人以上が必要となります。

また設立費用はそう掛かりませんが、審査に時間が掛かりますので、準備から設立までは大体4ヶ月程度は見ておくようにしましょう。

より詳しく!法人の種類比較

より詳しく!法人の種類比較

ここまでで、それぞれの法人格の種類について紹介してきました。

ここでは、各法人格の種類の特徴について、一覧で確認できるようまとめておきますので、どの法人格を選択すればよいのか検討する際に、ぜひお役立てください。

営利法人の種類比較

まず営利法人の4種類について、ここではまとめておきます。

特に株式会社か合同会社かで迷う方は多くいますので、以下の比較表を上手く活用し、事業内容に合わせてどちらにすべきか決定しましょう。

株式会社 合同会社 合名会社 合資会社
最低人数 1人~ 1人~ 1人~ 2人~
出資者責任 有限 有限 無限 有限・無限
資本最低金額 1円~ 1円~ 1円~ 1円~
設立期間 3週間程度 1~2週間程度 1~2週間程度 1~2週間程度
設立費用 約24万円~ 約6万円~ 約6万円~ 約6万円~
役員任期 最長で10年
決算公告 必要 不要 不要 不要

ここまでで、法人格の種類が決まったという方は、会社設立の仕方が気になるところでしょう。

以下の記事では、その点について詳しく紹介していますので、気になる方はその手順についてサッとでも確認しておくようにしましょう。

いざという時にスムーズになります。

法人の作り方の手順とは!事前準備や登記後に行うべきことも法人の作り方の手順とは!事前準備や登記後に行うべきことも

他にもある!株式会社と合同会社(持分会社)の違い

これら2つの法人格には、比較表に示した項目以外にも違いがあります。

ここでは、他にどういった違いがあるのかについて紹介しておきます。

利益の配分設定の違い

まずは「利益の配分設定」の違いから見ていきましょう。

株式会社では、ある企業に多額の出資を行い、株をたくさん所有しているほど配当も多くなります。

一方の合同会社では、定款に社員への配分をあらかじめ設定することができます。

要は出資した額は関係なく、どの程度「会社に貢献したか」というモノサシで配分を決めても良いことになるのです。

このように合同会社の場合では、配分について比較的自由に設定することができます。

注意

ただし自由に配分できるということは、親しい間柄で起業した場合、内容によってはその関係にヒビが入ることもあります。

何を基準に配分を決定するのかについては、明確に決めておくことが大切です。定款に定める際には、その内容に問題がないかを全社員が確認するようにしましょう。

取締役の選任手続きの違い

株式会社では、数年単位で「取締役はだれにするのか」ということを、株主総会を開いて決めなくてはいけません。

その際には、議事録を作成しておき、選ばれた取締役については再登記が必要となります。

また、登録免許税として1万円も必要となります。

一方の合同会社では、「取締役」という概念自体が法律上定められていないため、これらの手続きは必要ありません。

注意

任期が過ぎ、選任手続きを行っていない場合、罰せられることもあります。

面倒ではありますが、株式会社の場合は忘れずに手続きを行うようにしましょう。

※合同会社の場合は、役員の任期もありません。

組織決定の違い

株式会社では、株主総会や取締役会を開き、代表取締役やそのほかの役員の決定をしていきます。

一方の合同会社では、定款により決め方についても自由に定めることができます。

Tips

株式会社では「代表取締役」とよばれる役職名が決められていますが、合同会社では法律上は特に定められていません。

 

一般的には、「代表社員」とよばれていますが、従業員と勘違いされたくない方もいるでしょう。そういった場合では、定款に「代表取締役」や「社長」などと肩書きを定めることができます。

 

ただし登記簿上は、定款で定めた肩書きに関係なく「代表社員」と表記されますので、頭の片隅にでも覚えておきましょう。

非営利法人の種類比較

次に非営利法人について、それぞれの特徴をまとめておきます。

非営利法人は営利法人とは異なり、設立時の許認可や事業報告が必要となることもありますので、設立時には下表を再度確認するようにしておきましょう。

社団法人 財団法人 NPO法人
最低人数 2人~ 1人~ 10人~
資本最低金額 300万円が必要
設立期間 3週間程度 3週間程度 4ヶ月程度
設立費用 約11万円~ 約11万円~ 数千円程度
役員任期 最長2年 最長2年 最長2年
許認可 不要 不要 必要
決算公告 必要 必要 必要
事業報告 不要 不要 必要

法人の種類で注意しておくべきこと

法人の種類で注意しておくべきこと

ここまでである程度、法人の種類は絞り込めたでしょうか。

ただ、もう少しだけお付き合いください。法人格を選ぶ際には、いくつか注意点が存在します。

この注意点を理解していないがために、後に「こんなはずではなかった」という事態を引き起こす要因にもなります。

そのため、ここの項はしっかりと目を通すようにしておいてください。では早速順に紹介していきます。

注意①:法人の種類を変更する場合

法人の種類を変更したくとも、最初に選択している法人格によっては、その変更もできないことがあります。

変更ができない法人格としては、主に以下が挙げられます。

変更できない法人格
  • NPO法人
  • 社団法人
  • 財団法人

そのため、法人の種類を決定する際は、慎重に決定するようにしてください。

どうしても変更したくなった場合では、一度解散をした後に、新たに法人を設立する必要があります。

一方、営利法人である株式会社と持分会社では、法人の種類を変更することが可能です。

持分会社から他の持分会社へ変更したい際は、定款を変更することで別の法人格へと変えることができます。

注意

ただし、株式会社から持分会社の場合は「役員全員の同意」と「債権者保護の手続き」が必要となりますので、少々手間が増えるということを理解しておきましょう。

もちろん、持分会社から株式会社へ変更する場合も同様となります。

注意②:有限責任は本当に有限か

株式会社や合同会社では、有限責任であることに変わりはありません。

ただし、銀行などの金融機関から融資を受ける場合では、この有限責任というものは通用しないのです。

一体どういうことかというと、原則として融資では、法人格に対して連帯保証人が必要となるものです。

その連帯保証人として、会社の代表である社長本人がなることが多いでしょう。

その場合では、会社が融資金の返済について不能となってしまった場合、連帯保証人である社長が債務を負うこととなるのです。

その場合は、自己資金を使用してでも全額を弁済にあてなくてはならないことを覚えておくようにしましょう。

法人の種類は事業内容に合ったものを選ぼう

ここまでで法人の種類について、営利法人と非営利法人とにわけて、詳しく紹介してきました。

法人の種類は変更したくなったとしても、変更ができない法人格が存在します。

また変更可能な法人格であっても、その作業に手間がかかるものです。

もちろん、計画を立てた上での変更であれば問題はありません。

ただし原則としては、事業内容や将来的なことも考慮して、後に変更しなくてもいいよう、慎重に選択する必要があります。

ここで紹介した内容をしっかりと把握し、その上で事業に合った法人の種類を選ぶようにしていきましょう。

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