企業版ふるさと納税とは?メリット・デメリット、個人版ふるさと納税との違い

企業版ふるさと納税とは?そのメリットとデメリットを徹底解説

個人でも、節税や返礼品などのメリットがある「ふるさと納税」はご存知の方も多いでしょう。

これには、企業自体がふるさと納税に参加する「企業版ふるさと納税」というのもあります。

2016年から企業版ふるさと納税がスタートしたことにより、企業もふるさと納税に参加することができるようになりました。

しかし気になるのが、企業版ふるさと納税に参加するメリットが、そもそもあるのかというところです。

結論的に述べますと、企業が企業版ふるさと納税に参加するメリットがあります。

しかし反面で、デメリットも存在するのです。

今回は、企業版ふるさと納税とはなにか、企業が参加するメリットとデメリットについて、徹底的に解説していきます。

企業版ふるさと納税とは?

企業版ふるさと納税とは?

企業版ふるさと納税とは、冒頭で説明したとおり、企業そのものがふるさと納税に参加することを意味します。

しかし、企業版ふるさと納税は個人版ふるさと納税とはどう違うのだろうと、気になる人が多いのではないでしょう。

そこでまず、企業版ふるさと納税の内容について、解説していきます。

企業版ふるさと納税の具体的な仕組みを解説

企業版ふるさと納税の対象となるのは、もちろん企業に限定されます。

企業版ふるさと納税の正式名称は、「地方創生応援税制(まち・ひと・しごと創生寄附活用事業)」です。

自治体が実施している地方創生事業に寄付することで、寄付額の6割に相当する税制控除が受けることができるのです。

税制控除については、「最大6割の減税が見込める」という見出しで詳しくご説明させていただきます。

さて、企業版ふるさと納税がどのような方法で実施されるのかというと、

  1. 地方公共団体が地方版総合戦略を策定
  2. 地方公共団体が地域再生計画を作成
  3. 内閣府が作成された地域再生計画を認定
  4. 企業が認定された地域再生計画に参加して寄付を行う
  5. 企業に対する国と地方が税制控除を行う

(参照:地方創生推進事務局/制度概要

基本的にこのような流れとなります。

ただし、不交付団体(地方交付税を受けていない自治体)の東京都や、同じ不交付団体である日本三大都市圏(首都圏・中京圏・近畿圏)の自治体は、企業版ふるさと納税の対象外となっています。

また、企業の本社がある自治体の寄付も対象外となっているので、企業版ふるさと納税に参加して自治体に寄付するときは、こういった部分も必ずチェックするようにしましょう。

地方自治体に寄付すれば全てが適用対象になるとはかぎらない

企業が地方自治体に寄付すれば、全てが税制控除の適用対象になるとはかぎりません。

なぜかというと、企業版ふるさと納税の目的は、地方推進のためにあるからです。

国の認定を受けた地方創生事業に対する企業の寄付は、企業版ふるさと納税の対象となり、企業は税制控除を受けることが可能となります。

そうではない地方創生事業への寄付は、税制控除の対象にはならず、単なる寄付になってしまうのです。

どのようにして、国の認定を受けた地方創生事業を行っている自治体を探すのかについてですが、「企業版ふるさと納税ポータルサイト」を活用するといいでしょう。

内閣地方創生推進事務局が運営する「企業版ふるさと納税ポータルサイト」から、好みの寄付先を検索することが可能です。

一番注目していただきたいのが、事業別分野です。

地方創生事業と言っても、カテゴリーが多く存在します。

  • 交通・都市計画
  • 生涯活躍のまち
  • 空家・空き店舗対策
  • 環境保全
  • 人材育成
  • 結婚
  • 子育て
  • 企業誘致・起業支援
  • 就業支援
  • 農林水産業
  • ものづくり
  • 観光・交流
  • 文化・芸術
  • スポーツ
  • 情報発信・PR
  • エネルギー
  • ICT
  • イノベーション
  • 移住・定住

出典:内閣地方創生事務局/企業版ふるさと納税対象事業(事業分野別)

カテゴリーは19種類存在し、その分野に特化した事業を自治体が中心となって行っているのです。

企業版ふるさと納税に参加する企業は、寄付先を選んで実際に寄付を行い、税制控除の対象となることが可能になります。

個人版ふるさと納税との違いとは?

個人版ふるさと納税と企業版ふるさと納税の違いは、以下の3つです。

個人版ふるさと納税と企業版ふるさと納税の違い
  1. 企業は法人税などの控除が受けられる
  2. 企業は返礼品がない
  3. 企業は最低納税額が「10万円~」となっている

ではひとつずつ見ていきましょう。

企業は法人税などの控除が受けられる

個人版ふるさと納税は、我々一般人がふるさと納税を実施している自治体に寄付することで、住民税と所得税の控除を得ることが可能となります。

どのくらい控除されるかは、個人の年収によって決まります。

なぜなのかと言いますと、年収によって住民税と所得税の納税額が決まるところにあるためです。

たとえば住民税の場合、ふるさと納税を行う本人の年収が300万円で、家族構成は独身だとします。

このときの年間控除額は、約28,000円となります。

これはあくまで目安となっているので、具体的に計算して控除額を知りたいという方は、住まいの自治体の市役所などにお問い合わせてください。

ちなみに、それ以上の控除額を超える寄付を行った場合は、超えた分が自己負担になるわけです。

一方の企業版ふるさと納税に参加した企業は、法人税などの税制控除を受けられます

これについての詳細は、「最大6割の減税が見込める」という見出しで、詳しく解説していきます。

企業は返礼品がない

個人版ふるさと納税では、指定の自治体に寄付することで返礼品がもらえるものです。

しかし、企業版ふるさと納税は返礼品がありません

この部分については「通常は返礼品や謝礼品がない」で、詳しくご説明いたします。

企業は最低納税額が「10万円~」となっている

個人版ふるさと納税の場合は、返礼品ごとに金額が設定されており、5,000円からでも寄付することができます。

しかし企業版の場合では、地方創生応援税制で控除を受けたいのであれば、1回の寄付につき10万円以上寄付する必要があります。

もし仮に10万円に満たない場合では、控除対象とならないため、この点については十分注意した方がいいでしょう。

またあくまでも1回の寄付あたり10万円であって、合計ではありません。

複数の自治体へ寄付しており、合計10万円だったとしても、控除の対象外となってしまうのです。

「法人税」「法人住民税」「法人事業税」の違いを知ろう

実は法人税には主に3種類があります。

  • 法人税(法人所得税)
  • 法人住民税
  • 法人事業税

わたし達が普段から呼んでいる法人税とは「法人所得税」を意味し、文字通り企業の所得に応じて課税されるものです。

「法人住民税」は、地方の自治体から課税される地方税となります。

「法人事業税」は、法人所得税と同じく企業の所得に応じて課税されるのですが、法人所得税と違う部分があります。

それは、費用として損金算入が可能になるというところです。

損金算入を行うことで、税金を減らすことができるというわけです。

その損金算入を、企業版ふるさと納税にも応用することができますので、有効利用しない理由はないと言えるでしょう。

企業版ふるさと納税のメリットとは?

企業版ふるさと納税のメリットとは?

企業が企業版ふるさと納税に参加するメリットはあります。

そのメリットを次に挙げて、解説していきます。

最大6割の減税が見込める

企業版ふるさと納税に参加することで、企業は最大6割の減税が見込めます。その内訳とは、

  • 法人住民税+法人税:2割
  • 法人事業税:1割
  • 損金算入:約3割
  • 企業負担:約4割

※参照:内閣地方創生推進事務局/地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の運用改善)

基本的にこのようになります。

仮に最大6割の減税が確定されると、自治体が実施する地方創生事業に企業が1,000万円を寄付すると、企業の負担が400万円になるという計算となるわけです。

地方創生を応援したい企業にとって、この税制控除は経済的に、大いに助かると言えるでしょう。

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寄付した企業の知名度向上

企業が、自治体が実施している地方創生事業に寄付することで、寄付した企業の知名度の向上が見込めます。

もう少し経済的に述べるなら、PR活動です。

地方創生事業に取り組んでいる自治体を応援する企業として、企業はPRすることができるというわけです。

経費として計上が可能なところがある

通常、ふるさと納税の寄付は経費として認められません。

しかし企業版ふるさと納税の場合、自治体が実施する地方創生事業は「公共性が高い」として、経費の計上が可能となります。

ただ、寄付額全てを経費にすることができませんし、行う必要もありません。

理由としては、寄付額のうち4割が自己負担となることにあります。

この4割が自己負担という部分を経費として計上が可能になるのです。

しかし、勘定科目がわからないと、頭を抱える企業経営者も少なくはないでしょう。

企業がPR目的で企業版ふるさと納税に参加するのなら、勘定科目は「広告宣伝費」となりますので、ぜひこれを機に覚えてしまいましょう。

企業版ふるさと納税のデメリットとは?

企業版ふるさと納税のデメリットとは?

企業版ふるさと納税のメリットを説明しましたが、当然ながらデメリットもあります。

そのデメリットを次に挙げて、解説していきます。

通常は返礼品や謝礼品がない

企業版ふるさと納税は、わたし達が利用するふるさと納税とは異なり、返礼品や謝礼品がありません。

その具体的な理由としては、まずこちらをご覧ください。

A6-1.法人に対し、寄附を行うことの代償として以下の行為が禁止されています。
a.補助金を交付すること。
b.他の法人に対する金利よりも低い金利で貸付金を貸し付けること。
c.入札及び許認可において便宜の供与を行うこと。
d.合理的な理由なく市場価格よりも低い価格で財産を譲渡すること。
e.このほか、経済的な利益を供与すること。

出典:内閣府地方創生推進事務局/まち・ひと・しごと創生寄附活用事業に関するQ&A

内閣府地方創生推進事務局の資料によると、企業版ふるさと納税に参加する企業は、参加の代償として経済的な利益を得ることを禁止されています。

返礼品や謝礼品を自治体から受け取るという行為は、利益を得る行為に該当するので、企業は自治体から返礼品や謝礼品を受け取ることができないのです。

返礼品や謝礼品が欲しい場合は、企業経営者としてではなく一個人として、一般向けのふるさと納税に参加する必要があります。

企業経営者がふるさと納税に参加してもいいのか?

と疑問を抱くかもしれませんが、企業経営者ではなく一個人としてなので、参加には問題ありません

もちろん、企業で働く従業員もふるさと納税に参加することができます。

安定的な収入を得て、経済的なゆとりを持っている場合、節税対策としてふるさと納税に参加することも検討してみましょう。

寄付する側に経済的な利益がない

企業版ふるさと納税に参加する企業は、自治体の地方創生事業に寄付しても、経済的な利益がありません。

なぜかというと、「通常は返礼品や謝礼品がない」という見出しで説明したとおり、経済的な利益を得ることが禁止されているからです。

しかし、企業のPR目的は禁止されていません。

なぜなら、この資料の一面にあります。

A10-1.地域再生法に基づき認定を受けた地域再生計画については、一覧表及び全ての地域再生計画を内閣府のホームページで公表します。また、地方公共団体においても、認定を受けた事業をホームページで公表することをはじめ、企業に対して積極的にPRをするようにしてください。

出典:内閣府地方創生推進事務局/まち・ひと・しごと創生寄附活用事業に関するQ&A

むしろ内閣府地方創生推進事務局のほうが、企業のPR活動を積極的に行うようにと推進しています。

地方創生事業が企業のPR活動の場にできるなら、参加するメリットは十分にあるでしょう。

地方交付税を受けていない自治体は対象外になる可能性が高い

地方交付税を受けていない自治体は、ふるさと納税の税制控除の対象外となる可能性が高いです。

なぜかというと、「企業版ふるさと納税の具体的な仕組みを解説」の見出しでも説明していますが、地方交付税を受けていない自治体は基本的に対象外となっているからです。

それだけでなく、企業の本社が自治体にある場合、その自治体が実施する地方創生事業への寄付は税制控除の対象外となっています。

これは重要なので、もう一度説明しますが、企業版ふるさと納税に参加するとき、企業の本社がその自治体にあるかどうかから、確認するようにしましょう。

企業版ふるさと納税の事例

企業版ふるさと納税の事例

ここでは企業版ふるさと納税には、どういったものが過去にあったのか、その事例を3つほど挙げて紹介しておきます。

大手も寄付していたりするので、サッと目を通すだけでも、案外面白いかもしれません。

また詳しく知りたい方は、内閣府地方創生推進事務局(全国の特徴的な取組)の「特徴的な事例(PDF)」を参照してみてください。

この資料は、多くの事例が掲載されたものとなります。

福島県(観光復興)

福島県の「新生Jヴィレッジによる地方創生推進プロジェクト」に対して、

  • 株式会社ツルハ
  • 武田薬品工業株式会社
  • 株式会社アドバンス

など2年間で計85社が寄付した事例です。

このプロジェクトは、サッカーナショナルトレーニングセンターを整備し再開することで、東日本大震災により被災した双葉エリアに対して、観光客の流入や雇用の創出を目指すものとなっています。

この内容に多くの企業が賛同し寄付されたため、多くの復興資金があつまりました。

埼玉県所沢市(観光復興)

埼玉県所沢市の「住んでみたい・訪れてみたいまち所沢プロジェクト」では、以下の企業がこのプロジェクトに対して寄付を行いました。

  • 株式会社KADOKAWA
  • 株式会社埼玉りそな銀行
  • 富士通株式会社

3社とも名の知れた企業ですね。

このプロジェクトでは、株式会社KADOKAWAが整備を進めている施設周辺に対して、アクセスにかかわる箇所を整え、東所沢への来訪者を増やすものとなっています。

長野県東御市(観光復興)

長野県東御市の「東御市湯の丸高原魅力ジャンプ・アップ・プロジェクト」では、以下の企業がこのプロジェクトに対して寄付を行いました。

  • 株式会社カクイチ
  • 株式会社八十二銀行
  • 株式会社日本ビルシステムズ

など、他44社。

このプロジェクトでは、トレーニングに最適な環境である「湯の丸高原」に本格的なトレーニング施設を新設するものとなっています。

また、ターゲットはアスリートから一般の方と幅広く利用できるようにし、地域活性を目指す形をとっています。

このプロジェクトも、多くの企業が賛同し、多額の寄付金が集まる結果と集まる結果となりました。

企業版ふるさと納税で恩恵を受けよう

企業版ふるさと納税とはなにか、企業版ふるさと納税に参加するメリットとデメリットについて紹介いたしました。

企業版ふるさと納税のメリットは、法人税などの税制控除と企業自体のPRにあるのですが、寄付額の4割を経費として計上することが可能という一面を持っています。

一方、デメリットはというと、経済的な利益が得られないとか、企業版ふるさと納税の対象外となっている自治体が存在するというところです。

とはいえ、内閣府地方創生推進事務局の公式ページにて、どの自治体がどういった地方創生事業を行っているのかを検索できますので、そう苦労はないでしょう。

企業版ふるさと納税は現在でも開催されているので、ここで紹介してきたメリットを受けたいのであれば、積極的に参加してみるようにしましょう。

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