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「NPO法人」と聞くと、ボランティア団体をイメージする人が多いのではないでしょうか。
しかし、実際はボランティア活動だけではなく、さまざまな活動をしています。
この記事では、
- NPO法人がどのような団体なのか
- NPO法人設立のメリット・デメリットにはなにがあるのか
- 設立費用と、その流れはなにか
- 注意点はあるのか
など、わかりやすく解説しているので、これからNPO法人を立ち上げたいと考えている人は、ぜひ参考にしてください。
NPO法人とは
NPO法人とは、「Non Profit Organization」の略で、正式には特定非営利活動法人のことをいいます。
NPO法人と聞くとボランティア団体をイメージする人が多いですが、実際の業務内容はボランティア活動だけではありません。
非営利団体なので、営利を目的とした活動をしないのが特徴です。
設立はNPO法に基づき、国から認証を受ける必要があります。
また、活動内容は次の20分野に限られています。
特定非営利活動とは、以下の20種類の分野に該当する活動であり、不特定かつ多数のものの利益に寄与することを目的とするものです。
1.保健、医療又は福祉の増進を図る活動
2.社会教育の推進を図る活動
3.まちづくりの推進を図る活動
4.観光の振興を図る活動
5.農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動
6.学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
7.環境の保全を図る活動
8.災害救援活動
9.地域安全活動
10.人権の擁護又は平和の推進を図る活動
11.国際協力の活動
12.男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
13.子どもの健全育成を図る活動
14.情報化社会の発展を図る活動
15.科学技術の振興を図る活動
16.経済活動の活性化を図る活動
17.職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動
18.消費者の保護を図る活動
19.前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動
20.前各号に掲げる活動に準ずる活動として都道府県又は指定都市の条例で定める活動引用:https://www.npo-homepage.go.jp/about/npo-kisochishiki/nposeido-gaiyou
非営利と聞くと「全くお金を貰わずに活動している」と思われる人もいるかと思いますが、無報酬で活動しているわけではありません。
次から営利と非営利の違いについて解説していきます。
営利と非営利の違い
営利を目的としない団体と解説しましたが、全て無報酬で活動をしているわけではありません。
NPO法人で言うところの非営利は、「社員に利益を分配しない」という意味になります。
通常の株式会社などは、利益が出た場合は、社員や株主に分配できます。この点が一般的な企業とは大きく異なる点です。
利益が出た場合は、活動資金に当てることになります。
規定にさえ従っていれば、利益を上げて、事業収入を得ることも社員に給料を支払うこともできます。
規定はあるものの、NPO法人でも活動した結果利益が発生するのは、何も問題はありません。
NPO法人設立のメリット・デメリット
ここからはNPO法人設立のメリット・デメリットを解説していきます。
一般的な会社とは異なる点も多いので、設立の際はメリット・デメリットの両方をよく確認しましょう。
NPO法人設立のメリット
NPO法人設立の主なメリットは、
- 社会的信用を得られる
- 法人名を使って活動ができる
- NPO法人は少額で設立が可能
- 税金が優遇される
- 補助金・助成金制度が利用しやすくなる
の5点があります。
次から1つずつ詳しく解説していきます。
メリット1:社会的信用を得られる
社会的信用を得るためには、時間をかけて実績を積んでいく必要があります。
NPO法人は、設立するための条件が一般的な会社よりも難しく、時間もかかります。
しかし、国からの認証も必要になるため、「NPO法人」というだけで社会的信用を得られるのです。
たとえば、NPO法人に対しての身近な方の反応では、
- 「ボランティア団体である」
- 「社会のために活動している」
といった受け取られ方が多く、このことからも信用性の高さが伺えるでしょう。
活動の実績が少なくても、企業や賃貸などを契約する際にスムーズに話が進みます。
また、社会的信用が高いことで、優秀な人材も集まりやすくなります。
一般の企業と同じように、規模が大きくなれば社員を雇用しなくてはいけません。
その際に社会的信用をアピールするために、法人化は非常に有効です。
メリット2:法人名を使って活動ができる
NPO法人を設立すれば、契約や口座名を法人名にできます。
個人と資産を分けることも可能で、個人名での契約よりも信頼を得やすくなります。
契約に関するリスクも代表個人ではなく、団体が負うことなります。
リスクを分散させることで、活動もしやすくなります。
メリット3:NPO法人は少額で設立が可能
一般的に会社を設立する際は、最低資本金や登記にかかる手数料などにお金がかかります。
しかし、NPO法人には、資本金や出資金がなくても設立が可能です。
設立にかかる手数料などは全て免除されます。
つまり、設立だけであれば数千円でできます。ただし、設立は数千円でも運営にかかる資金は必要になります。
一般的な企業と同様に、軌道に乗るまでの資金は必要になるでしょう。
それでも、株式会社などと比べれば、初期の経費が抑えられるので、大きなメリットといえます。
メリット4:税金が優遇される
NPO法人も収益事業で得た所得に関しては、法人税を支払う必要があります。
しかし、非営利活動を通して得た所得に関しては、課税の対象になりません。
つまり、課税対象となる特定の収益事業をしていない場合は、一切法人税を支払う必要がなくなります。
また、消費税に関しても、2期目までは免除になり、3期目以降も課税対象になる売上が1,000万円以下であれば、納税が免除になります。
ただし、商品の仕入れなどにかかる一部の消費税は納めなくてはいけません。
その他に印紙税も一部免除になるなどがあり、全てを合わせると非常に大きな金額が免除になります。
メリット5:補助金・助成金制度が利用しやすくなる
NPO法人は、収益事業もできますが、主な活動としては非営利目的です。
そのため、活動資金が足りなくなり、解散することも少なくありません。
そこで、自治体によってはNPO法人向けに補助金や助成金を用意していることがあります。
こうした補助金や助成金は、返済の必要がないため、大切な収入源の1つとして活用できるでしょう。
もちろん、制度を利用するためには、受給条件をクリアする必要があります。
倍率が高くなることも多く、条件をクリアしていても必ず支給されるわけではありません。
支給されないことも多いので、補助金や助成金に頼って運営するのは非常に危険です。
あくまで補助のために利用するのが前提となっています。
NPO法人設立のデメリット
NPO法人設立の主なデメリットは、
- すぐに設立できない
- 活動できる分野が限定されている
- 10人以上の社員が必要になる
- 情報公開をしなくてはいけない
- 事務処理のルールが厳しい
の5点があります。
メリットも多いですが、デメリットもいくつかあります。
次から解説していくので、しっかりと確認しておきましょう。
デメリット1:すぐに設立できない
NPO法人設立は、一般の企業と比べると複雑な手続きをしなくてはいけません。
審査などもあるため、設立までには時間がかかります。
提出書類の準備や書類を提出してからの審査を含めると、最低でも4ヶ月はかかります。
当然、書類に不備があれば審査は上手く通らないため、さらに時間がかかります。
同じ時期に申請している団体が多ければ、その分時間もかかります。
書類の作成に慣れていない場合は、もっと時間がかかることが予想されるでしょう。
できるだけ時間に余裕を持ち、書類作成などは専門家に監修してもらうことをおすすめします。
デメリット2:活動できる分野が限定されている
NPO法人を設立するためには、NPO法に規定されている非営利活動の20分野いずれかに該当しなくてはいけません。
活動内容を変更するには、総会を開催し決議を取り、再度所轄庁に書類を提出します。
非常に時間がかかますし、決議も必要になるため、基本的に変更はなかなか難しいです。
活動内容は、設立の申請前に十分に話し合い、活動の変更がないようにしましょう。
デメリット3:10人以上の社員が必要になる
NPO法人設立には、10人以上の社員が必要になります。
この10人は一般的な企業の社員とは異なり「活動内容に賛同してくれて入会した人」で、未成年や家族でも入会が可能です。
そのため、とりあえず人数を集めることは、そこまで難しくありません。
しかし、NPO法人では社員1人にも平等に決議権が与えられます。
信頼できる人や家族であれば、心配する必要はありませんが、あまり活動をよく思っていない人に決議権を与えてしまうとトラブルの元になってしまいます。
慎重に10人を選ぶとなると、時間のかかる作業になるでしょう。
デメリット4:情報公開をしなくてはいけない
NPO法人は年に1度、事業報告書や収支計算書などを所轄庁に提出する必要があります。
提出した書類は、誰でも閲覧できるようになります。
通常企業が隠しておきたい情報でも、公開しなくてはいけません。
法人化すると社会的信頼性は高まりますが、調べようと思えば誰でも、会社の内情を把握できてしまいます。
場合によっては、赤字の経営状況など、悪い部分も見えてしまうのはデメリットとなるでしょう。
デメリット5:事務処理のルールが厳しい
NPO法人は事務処理などのルールが厳しくなります。
今まで一般企業で事務の経験があっても、全て正しく記載する必要のあるNPO法人の事務処理は難しいことがあります。
専門知識のある人を雇用するか、税理士に依頼する必要があるでしょう。
NPO法人設立にはどんな条件がある?
ここからはNPO法人設立の条件について解説していきます。
主な条件には、以下のように8つの条件があります。
- 特定非営利活動を行うことを主たる目的とすること
- 営利を目的としないものであること(※1)
- 社員の資格の得喪に関して、不当な条件を付さないこと
- 役員のうち報酬を受ける者の数が、役員総数の3分の1以下であること
- 宗教活動や政治活動(※2)を主たる目的とするものでないこと
- 特定の公職者(候補者を含む)又は政党を推薦、支持、反対することを目的とするものでないこと
- 暴力団又は暴力団、若しくはその構成員、若しくはその構成員でなくなった日から5年を経過しない者の統制の下にある団体でないこと
- 10人以上の社員を有するものであること
※引用元:内閣府NPO(認証制度について)より
この中で以下の3つについて、ここでは補足していきます。
- 特定非営利活動目的であること
- 営利を目的としないこと
- 10人以上の社員を集めること
では早速、順にみていきましょう。
特定非営利活動目的であること
活動内容は、自由にできるわけではなく、NPO法で規定されている20分野から選択しなくてはいけません。
この20分野については、冒頭の「NPO法人とは」の項で紹介した通りです。
また内容を変更する際は、役員の合意を得ることと総会を開催し、決議を取る必要があります。
また、変更のために書類を所轄庁に提出する必要があるため、活動内容は変更のないようによく話し合ってから決定しましょう。
営利を目的としないこと
NPO法人は営利を目的にしない団体なので、利益が発生しても社員や寄付をした人に対して、利益を分配できません。
利益分配はできませんが、社員への給料やボーナス支給は分配にはならないため可能です。
利益が多く発生しても、臨時でボーナスを支給するといったことは一切できません。
利益は、来年度の活動予算や設備投資などに利用するのが一般的です。
10人以上の社員を集めること
10人以上の社員が必要になります。
前述したとおりNPO法人の社員は、一般的な企業の社員とは異なります。
家族が社員になることも認められているため、人数を集めるだけであれば、それほど難しくありません。
ただし、決議権は全ての社員に平等に与えられるので、社員にする人は慎重に選びましょう。
NPO法人設立の費用・流れ
ここからはNPO法人設立の費用と流れについて解説していきます。
通常の企業などと異なる部分も多いので、起業経験がある人も流れなどを確認しておきましょう。
NPO法人設立にかかる費用はいくら?
通常会社を設立登記するためには、登録免許税が数万円かかります。
これは株式会社なら最低でも15万円、合同会社なら最低6万円かかります。
しかし、NPO法人なら登録免許税はかかりません。
つまり、設立登記だけであれば0円でできます。
当然ですが、その他経費の交通費や印鑑代、通信費などで数千円程度はかかります。
さらに、申請書類の作成を専門家に依頼すると、その分費用がかかるので、注意しましょう。
それでも、通常の会社設立よりは費用を抑えられます。
NPO法人設立の流れ
NPO法人設立の流れは、大きく分けると、
- 申請書などの書類作成
- 所轄庁へ書類を提出
- 設立登記の申請書類を提出
の3つの手順が必要になります。
それでは次から設立の手順を見ていきましょう。
手順1:申請書などの書類作成
まずは申請書などの書類を作成していきます。
申請をする際に必要となる書類は以下の通りです(内閣府NPOの公式HPより抜粋)。
- 定款
- 役員名簿(役員の氏名及び住所又は居所並びに各役員についての報酬の有無を記載した名簿)
- 役員の就任承諾書及び誓約書の謄本
- 役員の住所又は居所を証する書面
- 社員のうち 10 人以上の氏名及び住所又は居所を示した書面
- 認証要件に適合することを確認したことを示す書面
- 設立趣旨書
- 設立についての意思の決定を証する議事録の謄本
- 設立当初の事業年度及び翌事業年度の事業計画書
- 設立当初の事業年度及び翌事業年度の活動予算書
※引用元:内閣府NPO(認証制度について)より
これらは、一般的な企業と異なる部分のあるので、十分に余裕をもって準備しましょう。
何か不備があると、修正と再提出する作業が増えてしまい、余計に設立に時間がかかってしまいます。
スムーズに進めるのであれば、行政書士などの専門家に依頼しましょう。
手順2:所轄庁へ書類を提出
申請の書類を作成したら所轄庁に提出して、審査期間に入ります。
書類に不備があった場合は、修正して再提出することになります。
また、この申請書類は縦覧期間(自由に見てもらう期間)を設けることが定められているため、誰でも見られる状態で公開されます。
開示される内容は、内閣府NPOのHPによると、以下のようになっています。
公告事項
- 申請年月日
- NPO 法人の名称
- 代表者氏名
- 主たる事務所の所在地
- 定款に記載された目的
※引用元:内閣府NPO(認証制度について)より
手順3:設立登記の申請書類を提出
書類を提出し、審査が通り認証されたあとは法務局に設立登記をします。
認証された日から2週間以内に提出しなくてはいけません。
認証されて設立が完了するわけではないので注意しましょう。
審査期間中に必要書類を準備しておくと、設立までスムーズに進みます。
NPO法人設立の注意点
ここからはNPO法人設立に関して、注意すべき点について解説していきます。
設立したあとの手続きや一般的な企業との違いに注意しましょう。
注意点1:設立後にも手続きが必要になる
NPO法人を設立したら、すぐに活動を開始できるわけではありません。
税務署・所轄庁に、
- 給与支払事務所等の開設届出書
- 法人設立届出書
- 定款の写し
などの各種書類を提出する必要があります。
設立したあとの提出書類は、数カ月ある審査期間中に整理しておくとスムーズに進められます。
注意点2:一般的な企業と異なる点が多い
NPO法人は一般的な企業とは、営利・非営利であること以外にも異なる点が非常に多いです。
社員が10人以上必要な点や決議権が社員全員に与えられる点など、これまでに会社を設立した経験がある人でも、分かりにくい部分も多くあります。
もちろん、設立の手続きも異なるので、事前によく確認しておくのが大切です。
不明な点がある場合は、行政書士への相談や各自治体で行っている相談会などを活用して疑問点をなくしましょう。
注意点3:役員報酬は役員全員がもらえない
NPO法人では、役員に渡す報酬を役員全体の1/3以下に抑えなくてはなりません。
これはつまり、理事が全6名いたとしても、そのうちの2名しか「役員報酬をもらえない」ことを意味します。
こうなると、他の4名については、
と考えてしまいますが、そうでもありません。
役員は、有給の社員として兼務もできるため、その対価である給料をもらうことができます。
そうすればタダ働きという事態を防ぐことができるでしょう。
ただし役員の中でも監事となる者に対しては、有給の社員と兼務することはできませんので、その点には注意が必要です。
NPO法人の利点を活かしてやりたいことを実現しよう
NPO法人には、株式会社などにはないメリットが多くあります。
「社会貢献のために会社を作りたい」と思っている人は、NPO法人設立を検討する価値はあるでしょう。
ただし、いくつか制限もあり、場合によっては株式会社のほうがNPO法人よりも都合が良いこともあります。
ぜひ今回の記事を参考にして、メリット・デメリットのどちらも理解したうえで、NPO法人設立を検討してみましょう。