損をしないための確定申告前に個人事業主が知るべき4種類の税金

損をしないための確定申告前に個人事業主が知るべき4種類の税金

脱サラや新卒フリーランスで個人事業主となった人たちにとって、確定申告や税金の計算は耳が痛い話でしょう。

個人事業主が納める税金について学校では教えてくれないので、会計・簿記や金融に詳しくなければお手上げ状態という人も多いはずです。

そこで今回は個人事業主が必ず抑えるべき、

  • 4種類の税金について
  • 各税金の納期限や支払方法
  • 納税の時に注意すべきこと
  • 節税のために法人化する時期

などについてご紹介していきます。

この4種類の税金の知識があれば確定申告も乗り切れますよ!

個人事業主が支払う税金4種類とは

個人事業主が支払う税金4種類とは

個人事業主が支払う税金として必ず押さえておきたいのは、たったの4種類だけとなります。

具体的には、次の挙げる税金となります。

  1. 所得税
  2. 消費税
  3. 住民税
  4. 個人事業税

それぞれについて順番にご紹介しますので、確認していきましょう。

税金の種類1:所得税

最初にご紹介する所得税とは、1年間の所得に対して発生する税金です。

1年間は、その年の1月1日から12月31日までを一区切りとしています。

所得とは

所得とは、収入(売上)から必要経費を引いた額のことをいいます。

たとえば、年間売上が500万円で必要経費が100万円だった場合の所得は、

  • 500万円-100万円=400万円

のようになります。

納税方法:税務署や金融機関で納税

納税方法は次の3つが考えられます。

  1. 税務署で現金払い
  2. 銀行口座から振替納税
  3. インターネットバンキングで納税

ちなみに銀行口座から振替納税する場合は、税務署への依頼書の提出を事前に済ませる必要があります。

納税時期:翌年の2月16日~3月15日

所得税の納税時期はその年の確定申告期限日までです。

例年の確定申告の期間は2月16日から3月15日で、3月15日が土曜日または日曜日の場合、期限日は翌月曜日になります。

2019年3月15日は金曜日なので、所得税の納税期限は3月15日です。

計算方法:課税所得金額×税率-課税控除額

所得税の納税額は所得や適用する控除によって変わります。

所得税の計算式は、

「課税所得金額×税率-課税控除額」

です。

課税所得金額は課税対象となる所得金額のことで、所得から各種控除を引いた金額になります。

この課税所得金額によって、税率と課税控除額が決まり、納めるべき所得税の金額が決定します。

課税所得金額 税率 課税控除額
~195万円 5% 0円
~330万円 10% 97,500円
~695万円 20% 427,500円
~900万円 23% 636,000円
~1,800万円 33% 1,536,000円
~4,000万円 40% 2,796,000円
4,000万円~ 45% 4,796,000円

たとえば課税所得金額が1,000万円の場合は税率33%、課税控除額1,536,000円なので、所得税は次のように求めます。

  • 10,000,000円×33%-1,536,000円=1,764,000円

税金の種類2:住民税

住民税は、道府県民税と市町村民税の総称です。

税金の名称は「道府県民税」や「市町村民税」ですが、東京都や特別区にも同様に適用されます。

住民税は、前年1月1日から12月31日の所得に対して、1月1日現在の居住地に納めるものです。

たとえば2018年12月14日に東京都渋谷区から北海道函館市に引っ越した場合、2017年の所得に対する住民税は渋谷区になります。

引っ越しをした2018年の所得に対する住民税の納税先は、2019年1月1日時点の居住地である転居先の函館市です。

2018年の所得に対する住民税は函館市に全額を納め、前年のほとんどを過ごした渋谷区には納めません。

納税方法:税務署や金融機関などで納税

納税方法は次の4つです。

  1. 銀行、信用金庫などの金融機関
  2. ゆうちょ銀行の口座から納税する場合は郵便局
  3. 市区町村の役所
  4. コンビニエンスストア

コンビニで納税するには条件があり、納付書1枚あたりの納付額が30万円以下で納付書にバーコードがついている場合に限ります。

納税時期:年4回または一括

住民税の支払いは、年4回の分割払いか一括払いになります。

分割払いの場合は、

  1. 翌年の6月末
  2. 8月末
  3. 10月末
  4. 翌々年の1月末

の4回が支払期限となります。

一括払いの場合は、翌年の6月末が支払期限です。

月末が土日祝日の場合は翌平日が期限になります。

たとえば2018年の所得に対する住民税を分割払いする場合、

  • 2019年7月1日(6月30日は日曜日)
  • 9月2日(8月31日は土曜日)
  • 10月31日(木曜日)
  • 2020年1月31日(金曜日)

が支払期限です。

計算方法:「均等割の住民税」+「所得割の住民税」

住民税は所得税と異なり、市区町村から納付書が届くので、自分で計算する必要はありません

しかし、納付書を受け取る前に納税額を把握しておきたい方も多いと思うので、計算式もご紹介します。

まず住民税は、「均等割」と「所得割」の2種類の税金の合計金額です。

均等割はその名の通り、その自治体の全員が同額を納めます。

納税額は自治体ごとに異なりますが、だいたい年間4,000円から5,000円程度です。

所得割は前年の所得に応じて納税額が決まります。

所得割の計算式は次の通りです。

  • (所得金額-所得控除額)×10%−税額控除額

所得控除額は扶養家族の有無などによって決まり、税額控除額は他の税金との二重課税などの調整によって決まります。

ちなみに10%道府県民税の税率4%市町村民税の税率6%合計です。

北海道夕張市(10.5%)や愛知県名古屋市(9.7%)など例外もありますが、ほとんどの自治体の税率は10%と考えて問題ありません。

税金の種類3:消費税

3つ目、4つ目の税金は必ず支払うものではなく、対象者のみが納税義務を負います。

消費税は国や地方自治体に納めます(国に6.3%、地方自治体に1.7%)。

たとえばコンビニで税抜100円のお菓子を買うとき、消費税の8円もわたしたちは一緒にコンビニに支払いますよね。

実はコンビニは消費税を一時的に預かる役割を担っていて、コンビニが国や地方自治体にわたしたちに代わって消費税を国や地方自治体に納めてくれています。

これと同じことが個人事業主にもいえて、クライアントからもらった収入には消費税が含まれています。

個人事業主はコンビニと同じ一時的な消費税の預かり先になります。

納税するときが来たら、個人事業主も消費税を国や地方自治体に納めないといけません。

納税方法:税務署や金融機関で納税

納税方法は所得税と同じで、3通りが考えられます。

  1. 税務署で現金払い
  2. 銀行口座から振替納税
  3. インターネットバンキングで納税

ちなみに銀行口座から振替納税する場合は、税務署への依頼書の提出を事前に済ませる必要があります。

納税時期:翌年の3月末まで

納税対象者になった場合は、翌年の3月末が納税期限です。

3月31日が土日祝日の場合は翌平日にスライドします。

消費税は開業から2年間は納税の義務がありません

開業から2年が経っていても、2年前の課税売上(税抜の売上)が1,000万円以下の場合は基本的に納税しなくて済みます

例外として、前年上半期の課税売上が1,000万円を超える場合は、その翌年から納税しなくてはいけません。

売上に対して納税するか決まるので、赤字だとしても支払う必要があります。

計算方法:売上で得た消費税-経費などで支払った消費税

消費税の納税対象者になった場合の納税額の計算はいたってシンプル。

売上で得た消費税から経費などで支払った消費税を引くだけ。

たとえば税抜500万円の経費で、税抜1,200万円を売り上げた場合、納税する消費税は次のように求めます。

  • (1,200万円×8%)-(500万円×8%)=96万円-40万円=56万円

経費で購入したときのレシートが手元にある場合は、消費税の項目をしっかり確認しましょう。

税金の種類4:個人事業税

最後にご紹介するのは個人事業税です。

都道府県に対して納める税金で、指定された70種の業種に従事する人のみが支払います。

指定された業種でも一定の所得がないと納税対象者にはなりません。

納税方法:税事務所や金融機関などで納税

個人事業税の納付先は複数あります。

  • 各自治体の税事務所
  • 口座振替
  • コンビニエンスストア
  • クレジットカード納付など

納税時期:年2回または一括

個人事業税の通知は8月に納税対象者のみに届きます。

納税対象者でない場合、通知は届きません。

通知が届いた場合は、

  • 8月中に一括で納めるか
  • 8月と11月の2回に分けて分割納税

をしましょう。

計算方法:{所得-(各種控除+事業主控除290万円)}×税率

個人事業税も住民税同様に納付書が届くので、自力で計算する必要はありません。

ここでも住民税同様に計算式をご紹介します。

  • {所得-(各種控除+事業主控除290万円)}×税率

注目していただきたいのは、収入から各種控除と事業主控除290万円を引く箇所です。

つまり、所得と各種控除の合計が290万円以下の場合は、個人事業税を支払う必要はありません

個人事業税が発生する場合は業種によって3%~5%の税率をかけますが、ほとんどの業種は5%の税率をかけます。

近年のフリーランスに多いフォトグラファー(第1種事業)やデザイナー(第3種事業)も、事業区分は違えど税率は5%です。

区分 税率 事業の種類
第1種事業 5% 物品販売業、運送取扱業、料理店業、遊覧所業、保険業、船舶定係場業、飲食店業、商品取引業、金銭貸付業、倉庫業、周旋業、不動産売買業、物品貸付業、駐車場業、代理業、広告業、不動産貸付業、請負業、仲立業、興信所業、製造業、印刷業、問屋業、案内業、電気供給業、出版業、両替業、冠婚葬祭業、土石採取業、写真業、公衆浴場業(むし風呂等)、電気通信事業、席貸業、演劇興行業、運送業、旅館業、遊技場業
第2種事業 4% 畜産業、水産業、薪炭製造業
第3種事業 5% 医業、公証人業、設計監督者業、公衆浴場業(銭湯)、歯科医業、弁理士業、不動産鑑定業、歯科衛生士業、薬剤師業、税理士業、デザイン業、歯科技工士業、獣医業、公認会計士業、諸芸師匠業、測量士業、弁護士業、計理士業、理容業、土地家屋調査士業、司法書士業、社会保険労務士業、美容業、海事代理士業、行政書士業、コンサルタント業、クリーニング業、印刷製版業
3% あんま・マッサージ又は指圧・はり・きゅう・柔道整復、その他の医業に類する事業、装蹄師業

最後に、ここまでご紹介した4種類の基本の税金を一覧にまとめました。

所得税 住民税 消費税 個人事業税
納税義務 必ず納税 必ず納税 売上による 業種による
納税先 地方自治体 国・地方自治体 地方自治体
税金計算 自分で計算 納付書に記載 自分で計算 納付書に記載
税率 累進課税(5%~) 原則10% 現在は8% 業種による(~5%)
納税期限 翌年3月15日 翌年6月末or分割 翌年3月末 翌年8月末or分割

個人事業主のその他の税金

先にご紹介した4種類の税金とは別に個人事業主が納める税金について、軽くご紹介します。

復興特別所得税:東日本大震災の復興財源で、必ず納税

先ほどは割愛しましたが、実はもう一種類わたしたちには納めるべき税金があります。

それは復興特別所得税です。

2013年から2037年の25年間だけ納める税金で、東日本大震災の復興財源に充てられます。

計算方法:「基準所得税額」×2.1%

復興特別所得税の計算方法はとてもシンプルで、「基準所得税額」に一律で2.1%をかけた金額です。

この基準所得税額の定義は日本に住んでいるかどうか、日本に住んでいる場合は永住権があるかどうかによって異なります。

区分 基準所得税額の定義
日本居住者 永住者 所得税額
非永住者 国内源泉所得または国外源泉所得のうち、
国内払いのものまたは国内に送金されたものに対する所得税額
非居住者 国内源泉所得に対する所得税額

大多数の人が該当する日本在住の永住権を持っている人の場合、先にご紹介した所得税額がそのまま基準所得税額になります。

先の所得税の例で所得税額は1,764,000円だったので、この金額を基準所得税額とした復興特別所得税額は次の通りです。

  • 1,764,000円×2.1%=37,044円

その他:自動車税など必要に応じて

復興特別所得税を含む4種類の税金以外にも、必要に応じて納めるべき税金もあります。

自動車を仕事で使う場合は自動車税、事務所やオフィスを借りている場合は固定資産税など事業形態によるので、税理士やファイナンシャルプランナーに相談してください。

個人事業主が税金を納める前に注意すること

個人事業主が税金を納める前に注意すること

最後に税金を納める前に注意することを3つご紹介します。

盲点となっていてあとでドタバタする方も少なくないので、頭の片隅に入れておいてください。

注意点1: 節税しすぎ=所得が少ない=信用が減る!

まず法人・個人問わず会社員以外なら誰もが気になる節税について。

節税すれば国や地方自治体に支払う金額が減るので、資金繰りが楽になります。

しかし、節税するということは所得を少なく見せることとあまり相違ありません。

つまり、クレジットカードの審査など信用が必要な場面で、所得が少ないことがマイナスに働く可能性があります。

カードや住居の審査では、支払いが継続できる安定した収入があることが絶対条件になりますが、所得が少ないと滞納する可能性が高いと思われて審査に通りにくくなります。

節税も大事ですが、プラスばかりではないので要注意です。

注意点2:所得が増え始めたあとの散財に注意!

今回ご紹介した4種類の税金すべての納税期間が、実際に所得が発生した時期より、かなり遅かったのにお気づきでしょうか?

個人事業主の場合は収入が安定しない人も多く、前年に所得が増えたばかりに多額の税金を翌年納税しなくてはいけないこともあります。

年棒数千万円のプロ野球選手が現役を引退すると、翌年の所得税は現役時代の所得をもとに計算するので、引退翌年は年収より所得税のほうが高額になるという話もあります。

所得が増えたからといって散財するのは禁物です。

注意点3:申告漏れに注意はもちろん、虚偽申告は絶対やめましょう!

最後は確定申告前に申告漏れに注意するのはもちろん、虚偽申告はやめましょうという当たり前の話です。

虚偽申告は「所得税法違反」「消費税法違反」として脱税とみなされ、懲役刑になる場合もあるでしょう。

ちょっとくらいごまかしても大丈夫

と高を括らず、正確に確定申告しましょう。

個人事業主より法人化した方が税金が安くなることも

個人事業主より法人化した方が税金が安くなることも

個人事業主の中には、支払うべき税金が高くなってしまい、頭を抱える方も少なくありません。

そういった場合では、法人化をした方が、断然税金が安くなることもあります。

ここでは、どんな状況にある個人事業主ならば、法人化するメリットを得られるのかについてまとめておきます。

具体的な状況としては、以下の3つが挙げられるでしょう。

  1. 1,000万円を越える売上がある場合
  2. 500万円を超える所得がある場合
  3. 従業員として家族を雇っている場合

では順に解説していきます。

1,000万円を越える売上がある場合

この1,000万円という一つのラインは、消費税の支払いが関係しています。

先にお伝えしたとおり、個人事業主は、

  • 開業してから2年が経過している場合
  • 1,000万円を超える売り上げがある場合

の2つの条件が当てはまった際に、消費税を納める義務が発生します。

法人化する際は、このタイミングで行うようにしましょう。

というのも、このタイミングで法人化した場合、消費税を支払わなくてもいい期間(消費税非課税期間)が延長されます。

そうすれば、本来納めるべき消費税を支払わなくてよくなるため、その分が節税されるということになるのです。

500万円を超える所得がある場合

基本的に個人事業主が支払うべき所得税は、所得が上がるほど税金の額も上がる仕組みになっています。

しかし、法人化した場合に支払う法人税(個人事業主でいうところの所得税にあたる)の場合では、その税率がほとんど変わらずに課税されます。

つまりは、所得のある一定のラインを境に、個人事業主のほうが納めるべき税金額が高くなってしまうということです。

その一定ラインというのが大体500万円程度ということになるわけです。

このラインを超えるのであれば、法人化を検討しましょう。

注意

ただし、各個人事業主の状況によっては、納税額に差が出ることもあります。

一度しっかりと計算をしたうえで法人化の検討はしてみましょう。

従業員として家族を雇っている場合

個人事業主として、家族を雇っている場合、給料の支払いはもちろんできますが、その金額には上限があるものです。

一方法人化した場合では、そういった制限が特にない点もそうですが、給料として支払った分をすべて損金として算入できるようになります。

つまり、利益を小さくすることができるため、課税対象額が減るということです。

これも、かなりの節税効果が期待できるでしょう。

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個人事業主の税金はしっかり把握して損をしないようにしよう

個人事業主が必ず抑えるべき4種類の税金についてご紹介しました。

どの税金も、売上や所得を把握することで納税額を割り出すことができます。

こまめに会計処理をして収支を把握し、いつでも確定申告できるように心がけましょう!

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