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フリーランスになると、これまで会社でしてくれていた年末調整ではなく、自分で確定申告をしなくてはいけません。
全て自分で管理しなくてはいけないので、フリーランスになったばかりの人にとっては、分からないことばかりでしょう。
この記事では、確定申告の際に必ず必要になる「源泉徴収」について分かりやすく解説していきます。
基本的な知識はもちろん、計算方法や源泉徴収票に関する知識までカバーしていきます。
これからフリーランスとして仕事をしていく人は、確定申告の直前で慌てないように、ぜひ今回の記事を参考にして事前に準備しておきましょう。
源泉徴収とは
源泉徴収とは、給与や報酬を支払う際に、所得税を差し引いておく制度のことです。
給与や報酬を受け取る側は、源泉徴収されていれば、その分税金を支払う必要はありません。
逆に源泉徴収で、支払いすぎた税金を確定申告することで還付されることもあります。
会社員の場合は、年末か年始になると源泉徴収額を記載した「源泉徴収票」を会社から受け取ります。
しかし、フリーランスの場合は、源泉徴収票が発行されないことも多いため、源泉徴収がされる仕事とされない仕事を分けて管理しておく必要があります。
しっかり管理していないと、払う必要のある税金の支払いを忘れたり、還付されるはずの税金が返ってこないことになります。
管理を疎かにすると、損をすることになるので注意しましょう。
源泉徴収票に記載されている内容
源泉徴収票は、企業などの給与や報酬を支払う発注元が発行するものです。
源泉徴収される前の金額や源泉徴収された後の金額が記載されています。
会社員の場合は、所得控除の金額も記載されています。
源泉徴収票に記載されている金額は、確定申告の際に必要になるので、フリーランスにとっては重要な書類です。
源泉徴収票と支払調書との違い
支払調書は、源泉徴収票と同様に、給与や報酬を支払った際に発行される書類です。
支払った金額や源泉徴収された後の金額が記載されています。
どちらも法定調書といって、事業者は税務署に提出する必要があります。
受け取る側の大きな違いとしては、源泉徴収票と違い、支払調書は発行の義務がないことです。
支払調書がほしいときは、あらかじめ発行者にお願いしておきましょう。
フリーランスでなくても源泉徴収票は確定申告に必要
平成31年4月1日以降は、確定申告での源泉徴収票の添付が不要になりました。
しかし、源泉徴収票がないと、報酬から源泉徴収額を自分で計算しなくてはいけません。
自分の手で数十件、数百件の仕事で受け取る報酬の所得税を計算するのは、本来の業務に影響します。
複数から仕事を貰うことの多いフリーランスは、先方から源泉徴収票や支払調書をもらうことは必須といえます。
転職した人も必要になる
源泉徴収票は退職者にも発行され、転職先に提出しなくてはいけません。
もしも、年末までに転職しなかった場合は、翌年の確定申告で必要になります。
どちらにしても、退職時に受け取った源泉徴収票は大切に保管しておきましょう。
年末調整と確定申告の両方必要になることも
年末調整と確定申告は、基本的にどちらか手続きをすればいいのですが、両方必要になるケースもあります。
両方必要になるケースは、以下のような申告や控除が必要となる場合です。
- 雑所得申告
- 住宅借入金等特別控除
- 寄付金控除
- 配当金の申告
- 医療費の控除
よく利用されるのは、雑所得申告で、給与所得以外で一定以上を稼いだ際に必要になります。
フリーランスは、確定申告だけで年末調整をする機会はありませんが、副業しながら独立を目指している人などはチェックしておきましょう。
確定申告と年末調整の違いはなに?両方必要なケースもあるって本当?源泉徴収票は発行義務がある
会社は、給与所得の源泉徴収票を発行する義務があります。
稀に発行しないことがありますが、発行しなくてはいけない決まりになっているので、発行されない場合は会社側に請求しましょう。
ただし、給与所得ではなく報酬になると、発行義務はなくなるので注意が必要です。
源泉徴収票や支払調書がない場合は、自分で税金を計算しなくてはいけないため、発行して欲しいときは事前に請求しておきましょう。
副業でも源泉徴収票は必要
最近は会社員として働きながら、副業で仕事をしている人も多いですが、そのような場合も源泉徴収票や支払調書は必要になります。
年末調整は1箇所でしかできないという決まりがあるため、副業で得た収入は、給与・報酬にかかわらず確定申告が必要です。
ただし、給与所得以外で20万円を超えないのであれば、確定申告の必要はありません。
給与所得であれば20万円を超えなくても、確定申告をしなくてはいけないので、注意しておきましょう。
副業であっても、給与所得なら源泉徴収票の発行義務があります。
副業をしていると、自分で確定申告をしなくてはいけないので、忘れずに受け取っておきましょう。
フリーランスのための源泉徴収の計算方法
給与所得は毎年国税庁から公表される「給与所得の源泉徴収税額表」を利用して計算します。
フリーランスの場合は、基本的に給与ではなく報酬になるため、「報酬 × 10.21%」で計算できます。
また、報酬が100万円を超えた場合は、以下のような具合で計算ができます。
(報酬 – 100万円)× 20.42 + 10万2,100円
1回の報酬で100万円を超えることはほぼないため、報酬に10.21%をかけると覚えておきましょう。
頻繁に源泉徴収額を計算する際は、計算できるサイトや専用の確定申告ソフトを利用すると簡単に計算できます。
【2021年最新版】確定申告ソフトのおすすめを比較!青色申告をラクにするソフトの選び方とは? 損をしないための確定申告前に個人事業主が知るべき4種類の税金源泉徴収の納付方法
源泉徴収した所得税は、源泉徴収をした月の翌月10日までに税務署へ納付しなくてはいけません。
特例として、給与の支払い対象の人数が10人未満であれば、申請して認められれば年に1、7月の年2回まとめて納付できます。
納付書になる「所得税徴収高計算書」は税務署の窓口で貰うか、郵送で受け取れます。
記載内容は、納付書に従い支払った年月日や源泉徴収の総額などを記入します。
フリーランスが納付書を作成する機会は少ないのですが、外注が多く、源泉徴収する機会がある人は忘れずに納付しましょう。
フリーランスの源泉徴収票はどうやって入手する?
会社員は会社側が年末調整をしてくれるため、源泉徴収票は年末になると配布されます。
しかし、フリーランスの仕事は、給与ではなく報酬として扱われるので、発行の義務がありません。
そのため、クライアントから年末になると送られてくるといったことはありません。
クライアント側でも、依頼されなければ源泉徴収票や支払調書は発行しないことが多いです。
フリーランスで源泉徴収票を入手するには、事前に発行を依頼しておく必要があります。
発行義務がなくても、通常は事前に依頼すれば発行されます。
仕事内容によっては源泉徴収されない
仕事内容によっては、源泉徴収されないので、される仕事とされない仕事を確認しておきましょう。
源泉徴収される仕事は以下の通りです。
- 原稿料や講演料、デザイン料など
- 弁護士や司法書士などの資格を所持している人に対して支払う報酬
- 社会保険診療報酬支払基金が支払う報酬
- プロサッカー選手やプロ野球選手などに支払う報酬
- 芸能人や芸能プロダクションに対して支払う報酬
- 宴会などで客に対して接待を行うコンパニオンやホステスに支払う報酬
- 役務を提供することで一時に支払う契約金
- 広告宣伝の賞金や馬主に支払う競馬の賞金
フリーランスの仕事は、ほとんどが源泉徴収の対象になりますが、上記以外の仕事では、源泉徴収されないので注意しましょう。
源泉徴収はクライアント側が行うものですが、仕事を受ける側もきちんと把握しておくのが大切です。
ただし、個人同士の契約では源泉徴収されません。
つまり、フリーランス同士の契約や個人の友達への仕事依頼では、源泉徴収されないので気をつけましょう。
フリーランスの知り合いや友達に外注する際は、源泉徴収をしていないことを相手に伝えておくといいでしょう。
クラウドソーシングサイトでも発行できる?
最近はクラウドソーシングサイトから仕事を受注するフリーランスも多いでしょう。
しかし、クラウドソーシングサイトでは、源泉徴収票は発行されません。その代わりに、クライアントに依頼すれば支払調書を発行してもらえます。
ただし、前述したとおり、支払調書は発行の義務はありません。後から支払調書を発行してほしいと依頼しても、発行してもらえないこともあります。
契約前に支払調書の発行を依頼しておきましょう。
大手のクラウドソーシングサイトでは、支払調書を発行するシステムがあるので、そちらを利用してもいいでしょう。
もしくは、サイト上で確認できる源泉徴収額を参考にして、確定申告書を作成しても問題ありません。
フリーランスの請求書作成で注意すべきこと
フリーランスとして活動している場合、案件に対しての対価を受ける際に、請求書を作成することがあるでしょう。
この請求書には、報酬の支払い日や支払い額などを明記するものですが、それ以外に源泉徴収額も含め3つほど注意すべき項目が存在します。
注意すべき項目は、次の3つです。
- 消費税の金額
- 振込手数料
- 源泉徴収額
では、それぞれの一体何に注意すればいいのかについて、順にみていきましょう。
消費税の金額に注意
まず消費税の金額についてですが、ここで気を付けるべきは、以下の表示のどちらを適用するのかという点です。
- 「税込み」表示とするのか
- 「税抜き」表示とするのか
とくにこれら表記には決まりはなく、どちらにすべきかを適当に選んでしまう方もいますが、「税抜き」表示にしておいた方が良いでしょう。
なぜ税込み表示はダメなのか
もし税込み表示をしていた場合、消費税が上がるたびに、その値上がり分について報酬額を上げる必要があります。
あなたが、値上げ交渉をしっかりと行えるのであれば、これは大きな問題となりません。
しかし、気を遣ったりなどして報酬値上げをしなかった場合、消費税負担が増えている分、報酬額は下がるのです。
こうしたムダな損はしたくありません。
また、クライアント側からしても、心理的な面で負担を感じることもあるでしょう。
しかし、税抜き表示にしていれば、こうした心理負担は軽減されるものです。
これらを踏まえ、請求書に記載する報酬額は、税抜き表示としましょう。
振込手数料に注意
フリーランス側とクライアント側のどちらが振込手数料支払うのか、この点は事前に双方で確認しておく必要があります。
これはムダなトラブルを防ぐためにも、書面だけに明記するのはなく、しっかりと口頭でも伝えるようにした方がいいでしょう。
書面と会話で成立していれば、認識違いを防ぐこともできます。
また、フリーランスとして活動している場合、クライアント側からそういった細かな話が上がらないこともあるでしょう。
そういった際は、遠慮せずにしっかりと聞くようにしてください。その後すぐに書面へ反映し、確認を取るようにしましょう。
源泉徴収額に注意
フリーランス側で請求書を発行する場合、基本的には源泉徴収額は計算したうえで、その額を明記するべきです。
これはクライアント側の負担を減らすことで、今後の信頼面の向上を狙う目的もあります。
またクライアント側からすれば、
と感じる方も少なからずいるため、そういった方と契約を結んでいる場合には、源泉徴収額の記載は必須となるでしょう。
フリーランスは、クライアント側からのイメージも大切です。
こうしたところの手間を惜しむことで、報酬の安定にもつながってくるのです。ぜひ意識するようにしてください。
さて次からは、フリーランス側が仕事を発注する場合の源泉徴収の扱いについてみていきます。
フリーランスが外注するときは源泉徴収は必要?
フリーランスは基本的に、人を雇用せずに個人で仕事をしているため、外注しても源泉徴収をする必要はありません。
源泉徴収票や支払調書の発行もしなくても問題ないです。
ただし、フリーランスでも人を雇用して事業をしている場合は、源泉徴収する必要があります。
フリーランスで、個人ではなく、雇用しているケースが珍しいですが、人手不足などで人を雇うときは気をつけましょう。
源泉徴収票が欲しいと言われたら
フリーランスが外注をして際に、「源泉徴収票が欲しい」と依頼された場合は、源泉徴収をしていないので発行する必要はありません。
しかし、それでも支払いに関する明細が欲しいと依頼されたときは、支払調書の書式を利用し、支払金額を記載して送りましょう。
間違いが起きにくいように、源泉徴収の欄は0円と記入しておくといいでしょう。
義務ではありませんが、今後の仕事につながることもあるため、できるだけ対応することをおすすめします。
源泉徴収で知っておきたいこと
ここからは源泉徴収で知っておきたいことを解説していきます。
とくにフリーランスになってまだ確定申告をしていない人は、よく確認しておきましょう。
きちんと確定申告をしないと、支払う税金や還付される税金が変わることもあります。
源泉徴収票を再発行する方法
源泉徴収票を準備しておくと、確定申告の書類を作成する際に非常に楽になります。
しかし、申告までに1年近くあると源泉徴収票を紛失してしまう人もいるでしょう。
ここからはフリーランスと会社員、それぞれ再発行する方法を解説していきます。
フリーランスの場合
フリーランスで再発行するには、発行元であるクライアントに依頼するしかありません。
継続して仕事を引き受けているクライアントであれば、依頼すれば再発行してくれることもあります。
しかし、半年や1年近く前に仕事をしたクライアントに依頼しても発行されないこともあります。
依頼すれば必ず再発行してくれるというわけではないので、紛失などには十分注意しましょう。
当然ですが、紛失による再発行はフリーランス側のミスです。
仮に再発行しもらえる場合では、クライアントに負担がかからないように、返送が可能な封筒を送るようにしましょう。
会社員の場合
会社員の場合は、発行が義務付けられている給与所得の源泉徴収票になるので、再発行の依頼をすれば断られることはありません。
前に勤めていた会社の源泉徴収票を紛失した場合も同様に依頼しましょう。
発行の義務はありますが、紛失に関しては会社側には落ち度はありません。返送用の封筒や切手などは用意しましょう。
再発行してくれない場合の対処法
フリーランスは再発行が断られたときは、クライアント側に発行の義務はないため、諦めて自分で計算しましょう。
会社員は給与所得になるため、再発行の義務があります。
通常は再発行を断られることはありませんが、なかには断る会社もあります。
もしも、会社から断られたときは、税務署に相談しましょう。
税務署から発行元である会社側に指導が入り、発行してくれます。
源泉徴収票がなくても確定申告はできる
確定申告の際は、源泉徴収票を添付することになっていましたが、平成31年4月1日以降の確定申告では添付の必要がなくなりました。
ただ、源泉徴収されている所得税を計算するのが非常に大変になります。
フリーランスは数十件、数百件と仕事の件数が多いので、クライアントに支払調書を発行してくれるように依頼しておくのをおすすめします。
こまめに計算しておくのが大切
フリーランスは全て自分で管理しなくてはいけません。
仕事のスケジュール管理などで手一杯になり、源泉徴収の金額まで手が回らないこともあります。
しかし、後回しにしていると、確定申告前に苦労してしまいます。
1ヶ月ごとに区切って計算するなど、こまめに計算しておくと確定申告が簡単になります。
手間を減らしたいのであれば、確定申告ソフトを導入するといいでしょう。
【2021年最新版】確定申告ソフトのおすすめを比較!青色申告をラクにするソフトの選び方とは?フリーランスなら源泉徴収は正しく理解しておこう
フリーランスは、会社員とは違い自分で確定申告をしなくてはいけません。
そのためには、まずは源泉徴収について正しく理解しておく必要があります。
支払調書との違いや、源泉徴収されない仕事もきちんとチェックして、確定申告に備えましょう。
日頃からこまめに源泉徴収の計算や整理をしておくのも大切です。
「まだまだ先だから」と思わずに、ぜひ今回の記事を参考にして、準備を進めていきましょう。