この記事はPRが含まれていますが、直接取材・調査した一次情報を元に書かれています。
フリーランスは会社員と比べて、自分で管理しなくてはいけない部分が非常に多いです。
そのなかでも、とくに重要なのが健康保険の選択です。この記事では、フリーランスの健康保険の加入先について詳しく解説していきます。
- 健康保険の種類には何があるのか
- 国民健康保険と社会保険の具体的な違いはなにか
- 保険料を安く抑えるためには何をすればいいのか
- フリーランスが加入できる保険でカバーできない補償はどうするのか
など、わかりやすく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
これを読めば、健康保険についての糸口がきっと見つかりますよ!
では、早速進めていきます。
健康保険制度とは
健康保険制度とは、将来の怪我や病気に備えて、国民が皆で保険料を支払う制度です。
もしも、怪我や病気で病院で治療を受けたときは、医療費の1〜3割程度しか負担しなくて済みます。
負担しなかった7〜9割の医療費は、加入している医療保険から支払われます。
国民であれば、必ず何らかの保険には加入しなくてはいけない決まりになっています。
国民健康保険や健康保険組合、社会保険などさまざまな種類の健康保険があり、これらは耳にしたこともあるでしょう。
必ず加入するわけですから、保険にかかる保険料や保障内容を正しく理解しておく必要があります。
フリーランスが選べる4種類の健康保険
フリーランスが選べる主な健康保険は、主に以下の4つがあります。
- 国民健康保険
- 文芸美術国民健康保険組合
- 社会保険の任意継続
- 扶養家族に入る
フリーランスになると、会社には所属していないので、ほとんどの人が国民健康保険を選ぶことになります。
しかし、その他にも選択肢があるので、1つずつチェックして自分に最適な方法を選びましょう。
では、それぞれについて順に解説していきます。
1:国民健康保険
国民健康保険は、国民健康保険法という法律に基づき、各市町村が運営している健康保険です。
各市町村が運営しているため、市町村ごとに保険料が異なります。
フリーランスやフリーター、無職者など誰でも加入できるのが特徴となっています。
フリーランスになった際は、この健康保険を選択する人が最も多いです。
メリット
メリットは、所得が低い世帯への減免措置があることです。
フリーランスになると会社員時代よりも所得が下がってしまい、保険料や市民税などが支払えないことがあります。
国民健康保険なら、所得によって負担額が減るので、所得の低いフリーランスでも支払える金額になることがあります。
どの程度の減額になるかは市町村によって異なるので、自分が住んでいる市町村の役所やホームページで確認しましょう。
全国で共通する保険料の負担軽減措置もあります。
前年の所得が低い場合、所得により2割・5割・7割の3段階で、保険料が減額されます。
少し条件が厳しいですが、利用できる世帯にとっては大きなメリットになるでしょう。
また、加入条件がとくにないのもメリットといえます。
誰でも加入の対象になるため、働いていない無職者でも加入が可能です。
デメリット
デメリットは、他の保険と比べると保険料が高いことです。
フリーランスになりたての人は、会社員時代よりも資金的に苦しいことが多いので、大きなデメリットになります。
支出を抑えたい場合は、必ず他の保険を検討しましょう。
また、保障内容も他の保険よりもカバーできる範囲が少ないです。
傷病手当や出産手当など、社会保険では保障してくれる内容も、国民健康保険は保障してくれません。
人によっては必要ない保障内容もありますが、加入前に他の保険にある保障を確認しておくといいでしょう。
- 誰でも加入できる
- 保険料が高め
- 市区町村によって保険料が異なる
- 減免措置や負担軽減措置がある
- 保障範囲が狭いこともある
- 支払いの分割や延期も相談可能
2:文芸美術国民健康保険組合
国民健康保険組合は、国民健康保険法に基づいて組織された組合で、同じ業種の組員で構成されています。
ほとんどの組合は医師や建設、土木などですが、フリーランスでも入れる組合もあります。
それがイラストレーターやライター、写真家などが加入できる「文芸美術国民健康保険組合」です。
文化・美術関連の業種なら加入できる可能性があるので、チェックしてみましょう。
メリット
メリットは保険料が定額という点です。組合員は1人月額19,600円で、家族は月額10,300円と所得に関わらず定額となっています。
満40歳から64歳までの介護保険料は、月額4,000円です。
所得が一定以上の人は、国民健康保険よりも保険料を大きく抑えられます。
市町村にもよりますが、所得が300万円を超えていれば文芸美術国民健康保険組合のほうがお得になるでしょう。
また、健康診断や人間ドックを受ける際は補助金も出ます。
フリーランスは会社員と違い、健康診断を会社で受けないため、こうした補助があると健康管理がしやすくなるでしょう。
デメリット
デメリットとしては、加入審査が厳しいことがあるため、業種によっては加入しにくいことです。
場合によっては、制作物のコピーの提出が必要になることがあります。
所得の内訳なども求められ、加入条件が揃っているにもかかわらず、書類の記入が正しくないため審査に落ちるケースもあります。
少し加入の手続きが面倒なのがデメリットの1つです。
また、メリットに保険料が定額とありますが、値上げされる可能性があります。
実際に2017年には月額17,200円から月額19,600円に値上がりになりました。
月額2,400円で年間では28,800円も値上がりしたことになります。
所得が低い人は、国民健康保険の方が保険料は安くなるため、保険料を安く抑えたいなら、比較して安い方を選択するといいでしょう。
- 職種に制限がある
- 審査もあり厳しい(制作物を提出ことも)
- 保険料は定額だが上がることもある(2019年4月時点:月額19,600円)
- 介護保険料は4,000円
3:社会保険の任意継続
会社に勤めており、2ヶ月以上社会保険に継続して加入していた人は、社会保険の任意継続も選べます。
継続は、退職日から20日以内に手続きをすれば、2年間限定で社会保険を任意継続できます。
メリット
社会保険は保険料の上限が定められているため、所得によって保険料が決まる国民健康保険よりも保険料が安い場合が多いです。
所得が高い場合は、任意継続を選ぶほうが保険料はお得でしょう。
社会保険の継続なので、今までの保障内容もそのまま利用できます。
健康診断や人間ドックの補助も受けられます。
とくに怪我や病気、出産などで働けなくなったときに、手当金が支給される「傷病手当」「出産手当」があるのは、国民健康保険よりも優れている点でしょう。
また、扶養制度も引き継げるため、家族は保険料の負担がなくなります。
扶養家族がいる場合は、保険料が1人分だけで済むので、お得になります。
デメリット
社会保険の任意継続は最大で2年間と決まっています。
加入から2年経つと脱退となり、継続はできないので注意しましょう。
保険料に関しても勤めていたときの所得が少ない場合は、国民健康保険の方が保険料は安くなります。
当然ですが、会社が保険料の半分を負担してくれることもありません。
任意継続が必ず安いわけではないので、よく確認しておくのが大切です。
また、社会保険は滞納すると、すぐに資格喪失してしまうので注意しなくてはいけません。
国民健康保険は、支払いの延期や分割にも柔軟に対応してくれることがほとんどです。
- 2ヶ月以上社会保険に加入しており、退社20日以内の申請で加入可能
- 加入期間は2年間のみ
- 保険料には上限がある
- 高所得なら得になるが、低所得なら国民健康保険の方が安い
- 保障内容は変わらない
4:扶養家族に入る
フリーランスとして収入が少ない場合は、社会保険に加入している家族の扶養に入る方法もあります。
主な条件としては、加入者の年収2分の1以下で、さらに収入が130万円以下のときに扶養家族になれます。
メリット
メリットは保険料を負担する必要がなくなることです。
もちろん、保険料を支払わなくても、医療費の負担軽減などは受けられます。
フリーランスになってすぐに安定した収入を得られるわけではないので、大きなメリットといえるでしょう。
デメリット
デメリットは、収入に制限があることです。130万円を超えると保険料を支払う必要があります。
収入を上げたくても支払う保険料を考えると、新たに仕事を受けにくいということもあります。
働き方によっても異なりますが、今後収入を上げていきたいと考えたときに、制限が邪魔になることもあるでしょう。
- 加入者の年収1/2以下で130万円以下なら加入可能
- 保険料の負担はなし
- 医療費の負担軽減は受けられる
国民健康保険と社会保険の違い
ここからは、国民健康保険と社会保険の違いについて解説していきます。
加入条件や保険料、保障内容が変わってくるので、自分にとってどちらが最適な保険か確認していきましょう。
加入条件の違い
まずは、国民健康保険と社会保険の加入条件の違いから見ていきましょう。
国民健康保険
国民健康保険は、会社に所属していない人であれば誰でも加入ができます。
フリーランスはもちろん、無職者でも加入できます。
会社に勤務していても、パートやアルバイトで社会保険の加入条件を満たしていなければ、国民健康保険に加入できます。
社会保険
社会保険は会社に所属している人が加入できます。
その家族も扶養家族として加入が可能です。
パートやアルバイトでも、勤務時間が正社員の4分の3以上ある人、または以下の5つの条件を満たした場合は、社会保険に加入できます。
5つの条件は、以下の通りです。
- 月収8万8,000円以上(年収約106万円以上)
- 週の勤務時間が20時間以上
- 学生ではないこと
- 雇用期間が1年以上(雇用する予定でも可能)
- 勤務先の従業員数が501名以上
保険料の違い
国民健康保険と社会保険のどちらが安いかは、前年の所得や住んでいる市町村、世帯人数などによって変わります。
そのため、どちらが安いかは人によって違います。そのことを踏まえたうえで、保険料について見ていきましょう。
国民健康保険
国民健康保険は、前年の所得と世帯人数によって計算されます。
前年の収入が高かった場合は、今年の保険料も高くなります。
退職してフリーランスになり、所得が大幅に減ったとしても、保険料は前年の所得で計算されるので、収入に対して負担の割合は大きくなります。
社会保険
社会保険は給与によって決まり、都道府県ごとに設定された保険料額表を元に計算されます。
保険料は、会社側が半分を負担するため、実際に負担するのは半額になります。ただし、退職後の任意継続では、全額負担しなくてはいけません。
また、扶養家族がいる場合は、家族の保険料は負担する必要がなくなります。
会社に所属していれば、社会保険の方がお得になるケースがほとんどです。
しかし、フリーランスになると、所得によっては国民健康保険の方が安くなることもあります。
どちらを選択するにしても、まずは自分の住んでいる市町村の保険料を確認するところから始めましょう。
保障内容の違い
保障内容については社会保険の方が手厚く保障してくれます。
医療費の自己負担割合や出産一時金はどちらも同じですが、大きな違いは社会保険には「傷病手当」と「出産手当」があることです。
「傷病手当・出産手当」は、怪我や病気、出産のために働けなくなったときに、収入の3分の2が支給される保障です。
期間は傷病手当が最長で1年6ヶ月間、出産手当は最長で98日間支給されます。
ただし、社会保険の任意継続では、基本的には傷病手当・出産手当は支給されません。
例外として、1年以上加入しており、退職前に支給がスタートしていた場合は、手当が受け取れます。
国民健康保険の保険料を抑える方法
国民健康保険の保険料を安くする方法には、
- 所得を低くする
- 青色申告で控除を受ける
- 国民健康保険には免除制度を利用する
の3つがあります。
保険は重要ですが、出来る限り抑えるのも大事です。
それでは、詳しく解説していきましょう。
1:所得を低くする
国民健康保険は、前年の所得によって決定します。
つまり、所得を減らせれば、保険料も減ることになります。
所得は、収入から経費を引いた金額なので、経費を増やせば所得が低くなります。
無理に経費を使う必要はありませんが、経費にできるものはしっかり経費で落としましょう。
2:青色申告で控除を受ける
白色申告から青色申告にすれば、簡易簿記で10万円、複式簿記で65万円が控除されます。
控除額の分だけ所得が下がるため、保険料も安くなります。
青色申告は住民税も安くなるので、メリットが非常に多いです。利用していない人は積極的に利用しましょう。
3:国民健康保険の免除制度を利用する
国民健康保険は所得が少ない世帯では、免除・軽減制度が利用できます。
以下の表よりも世帯の所得が低い場合は、一度制度が利用できないか確認してみましょう。
世帯の所得 | |
7割減額 | 33万円以下 |
5割減額 | 33万円 + 被保険者数 × 28万円以下 |
2割減額 | 33万円 + 被保険者数 × 51万円以下 |
市区町村によって所得の金額や減額の割合が変わってくるので、上記の表はあくまで目安として捉えてください。
軽減の対象になっている可能性があるため、必ず役所などに問い合わせて確認してみましょう。
健康保険に加入しないとどうなる?
健康保険への加入は義務ですが、もしも加入しない場合はどうなってしまうのでしょう。
ここからは健康保険に加入しないときに、どうなるのか解説していきます。
医療費が全額自己負担
病院で治療を受けたときに支払う金額は、健康保険に加入していれば1〜3割ですが、未加入の場合は全額負担になります。
たとえば医療費に1万円かかるとすると、通常は3,000円ですが、未加入だと1万円の全額かかってしまいます。
ちょっとした怪我や病気では、全額負担でも大きな金額にはなりませんが、入院や通院になると負担が大きくなってしまうので注意しましょう。
罰金や延滞金が発生する
健康保険に加入しないと10万円以下の罰金が課せられます。
さらに、延滞金も発生してしまうので、本来の保険料よりも多くの保険料を支払うことになります。
と考える人もいるかと思いますが、隠すことはできないため、きちんと支払いましょう。
遡って過去の保険料が請求される
保険料は、加入資格が発生した日から支払いの義務が発生し、未加入の期間は遡って請求されます。
遡る期間は一般的には2年間です。ただ2年となると、その保険料は膨大でなかなか一括での支払いができないといったケースもあるでしょう。
そうした場合では、各市区町村の役場で分割できるか相談するようにしてください。
一気に請求が来ると毎月支払うよりも大きな負担になるので、注意しましょう。
遡られる期間が2年ではない場合も
先ほど遡る期間は、2年間だとお伝えしました。
しかしこの遡れる期間は、各市区町村で「国民健康保険料」という制度を適用しているのか、「国民健康保険税」という制度としているのかによっても異なるのです。
これら制度でそれぞれ遡れる期間は、以下のようになっています。
- 「国民健康保険料」:2年
- 「国民健康保険税」:5年
この点も、各市区町村の役場に確認した方がいいでしょう。
フリーランスの健康保険でカバーできない保障はどうするか
先にお伝えした通り、フリーランスが加入できる健康保険で一番有力な国民健康保険では、保障のカバー力が弱いのが現状です。
とくに不安となるのが、「ケガ、病気で一時的に働けなくなった場合の生活費」ついてではないでしょうか。
この点をカバーしていくためには、別途で保険加入する他ないでしょう。
ここで有力となるものが、以下の2つの保険です。
- 所得補償保険
- 就業不能保険
では、これら2つについて詳しく紹介していきます。
国民健康保険だけで不安に感じるフリーランスの方は、なるべく目を通すようにしてください。
「所得補償保険」とは
所得補償保険とは、ケガや病気をした際に、一時的に働けない間の所得を補償するものです。
また所得の補償期間は1~2年と短いですが、補償金はすぐ受け取れるようになっています。
受け取りまでは、おおよそ「1週間」ではありますが、これら期間については保険会社や保険商品よっても異なるでしょう。
また月々の保険料も、安いものでは3,000円前後から加入が可能です。保険料は、所得額や職種によっても変動しますので、各保険会社でよく確認するようにしましょう。
最近登場した保険ですと、「フリーランス協会の所得補償制度」がおすすめとなります。
カバー範囲が広いことに加え、長期補償も選択できますので、一度料金のシミュレーションをしてみることいいかもしれません。
その他の保険としては、以下もおすすめです。
「就労不能保険」とは
一方の就労不能保険では、一時的というよりも長期にわたって働くことがむずかしくなった場合に有効な保険です。
この保険の場合、月々の保険料は高くなりますが、その分60歳や70歳までなど、満了の時期を迎えるまで所得を補償してくれます。
受取期間については、数ヶ月程度かかることもあるので、短期間の間は生活できるくらいの貯金が必要でしょう。
また、就労不能と認定されることは厳しいこともありますので、事前に保険会社の方に問い合わせて、疑問が残らないようにしてから申込むことが大切です。
就労不能保険でいえば、以下に挙げるものがおすすめとなります。
フリーランスに最適な健康保険を見つけよう
フリーランスになると、退職後にそのまま国民健康保険に加入するのが一般的です。
しかし、その他にも国民健康保険組合や社会保険の任意継続などの選択肢があります。
それぞれにメリット・デメリットがあるので、業種や世帯の所得によって最適な健康保険を選択しましょう。
健康保険の加入や変更の際は、ぜひ今回の記事を参考にしてください。